米国人としてはじめてプレミアリーグのクラブを指揮するスウォンジーのボブ・ブラッドリー監督(58)について、米ウォールストリートジャーナル紙(電子版)が書いた記事が面白い。

 米国で話されている英語と、本場英国のイングリッシュでは言葉や表現の方法で異なる部分も多い。ブラッドリー監督も異国になじむため、なるべく英国式の言葉を使おうと努力をしているのだという。

 ただイングランドの人々はサッカーの母国としてのプライドが強い。もしブラッドリー監督が「米語」を使おうものなら「フットボールを知らないアメリカ人に監督をさせておいていいのか」と、集中砲火を浴びることになる。

 例えば、0-3で敗れた17日ミドルズブラ戦後のインタビュー。同監督が相手の2点目について言及した際、思わず「PKで決められた」と口にしてしまった。すぐにPKを「ペナルティー」と言い直したものの、一部のサポーターがSNSで監督批判をはじめた。

 イングランドではPKと言わずにペナルティーと言うのが普通。そもそもサッカーという言い方自体が米語。英国ではフットボールだ。その他、サッカー用語には英米で言い方が違うものが多い。

 ウォールストリートジャーナル紙は言葉の面から、ブラッドリー監督がどれくらいプレミアリーグに溶け込んでいるのかを検証。10月に監督就任してからの記者会見やテレビ出演時の映像をもとに、どれほど「英語」が使えているかカウントしている(カッコ内はインタビュー等でしゃべった回数)。

 

▽敵地での試合=英アウェー(2)、米ロード(3)

▽完封=英クリーン・シート(8)、米シャットアウト(0)

▽控室=英ドレッシング・ルーム(3)、米ロッカー・ルーム(0)

▽日程=英フィクスチャー(3)、米スケジュール(2)

▽GK=英キーパー(1)、米ゴーリー(0)

▽試合=英マッチ(35)、米ゲーム(93)

▽グラウンド=英ピッチ(3)、米フィールド(26)

▽ファン=英サポーター(16)、米ファン(4)

▽順位表=英テーブル(5)、米スタンディング(0)

▽練習=英トレーニング(38)、米プラクティス(0)


 この数字を見ると、それなりに言葉の面でも努力をしていると言えるのではないだろうか。当たり前だが、同紙が調べたブラッドリー監督の4時間22分の発言中、「サッカー」と言ったことは1度もなかった。

 ちなみに現マンチェスターCのグアルディオラ監督は、バルセロナを退団してから1年ほど米ニューヨークで暮らしていた。2-1で逆転勝ちした18日のアーセナル戦後、Y・トゥーレの出来について聞かれ、「He was awesome.(彼は素晴らしかった)」と答えた。

 素晴らしいという意味でawesomeを使うのはくだけた米語だが、グアルディオラ監督がイングランドのサポーターから非難されることはない。米国人のブラッドリー監督がちょっと気の毒になった。

 【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)