プレミアリーグでチェルシーが首位を快走中だ。2位トットナムに勝ち点7差をつけ、残り8戦で6勝をすれば自力優勝が決まる。

 もちろん、まだ優勝の可能性があるトットナムから7位エバートンまでのクラブが敗れれば、それだけチェルシーの優勝も早まる。

 英ミラー紙(電子版)は7日、その運動量と類いまれなるボール奪取能力で、MVP級の働きを見せているフランス代表MFエンゴロ・カンテ(26)についての記事を掲載した。

 カンテは昨季レスターの一員として、賭けオッズ5001倍の奇跡の初優勝に貢献。今季チェルシーでもリーグ制覇をすると、史上初めて違うクラブで連覇を成し遂げたフィールドプレーヤーになる。

 そんなカンテだが、ミラー紙によると、フランス1部カンでプレーしていた14-15年シーズンまで、自分がこれほどの成功を収めるとは想像できなかったという。

 カンテは振り返る。「僕がもっと若い頃、13歳から18歳くらいの時には、レンヌやロリアン、ソショーなど4~5クラブのアカデミーのテストを受けた。でも入団できなかった。いつも『ウチには君みたいな選手がいっぱいいるから、必要ない』みたいなことを言われたよ」。

 169センチ、68キロの体格も決してアピールできるものではない。そのため有力クラブではなく、フランス下部リーグに所属する、パリ近郊の小クラブ、シュレンヌでのプレーを余儀なくされた。

 ただ、カンテは自身の境遇をだれかのせいにしたり、クラブに文句を言ったりはしなかった。

 「なぜ強豪クラブに入れなかったのか、彼らから詳しく説明を受けたわけじゃない。でも自分の中では『単に僕は合格できる実力がなかったんだ』と思っている。僕と同じか、それ以上の選手が何人もいたからね」。

 シュレンヌでのプレーは悪いことばかりではなかった。小クラブだけに、自分より上のカテゴリーの選手が普段から一緒にボールを蹴ってくれた。その中でテクニックや戦術眼、体の強さなど多くのことを向上させることができた。

 その努力が実り、当時フランス2部だったブローニュへの移籍が決定。そこからカン、レスター、チェルシーへと続く夢への扉が開けた。

 チェルシーのチームメート、ベルギー代表MFアザールは、カンテのあまりの運動量に「ウチのチームにはカンテの双子がいるのか」と冗談を飛ばすほど。それでも本人に浮ついたところはない。

 「僕は世界最高のMFなんかじゃないよ。僕は、セスクやマティッチ、チャロバーら才能あるMFと一緒にプレーしている。彼らはそれぞれ違うスタイルを持っていて、学ぶべき部分は多いんだ」。

 他のスター選手たちがベントレーやレンジローバー、ポルシェ、メルセデス・ベンツといった高級車で練習場へ通う中、カンテはかたくなに大衆車の「ミニ」を運転し続ける。これからも自分を見失わず、努力を続けていってほしい。あらためて言わなくても、カンテならそうするだろう。

 【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)