ファンの数と同じだけアンチがいてこそ、一流のスポーツチーム、選手だと思っている。MLBヤンキースはヤンキースタジアム以外でプレーするときには激しいブーイングにさらされ、「evilempire(悪の帝国)」というニックネームもいただいている。

 NBA史上最高の選手の1人、ヒートのレブロン・ジェームズ(29)を嫌うファンも本当に多い。キャバリアーズから移籍する際、テレビの生放送で移籍先がヒートであることを表明。これが「お前、何様だ」とファンの反感を買った。田舎チームを1人でけん引してきた愛すべきエースが、憎悪の対象となった瞬間だった。

 アンチが多いということは、強いことの裏返しだ。「イタリアの恋人」とも言われる名門ユベントスのアントニオ・コンテ監督(44)は「(セリエAの戦いは)ユベントス対他の全クラブだ。少しの間、勝てない時期があったが、その時、ウチは人々に好かれるチームになりそうだった。だが今では(憎悪の対象としての)地位を取り戻した。それを誇りに思う」と、面白いことを言っている。

 欧州全体を見回した場合、近年、最もアンチの数が多かったチームといえば、05-06年シーズン以降、3度欧州チャンピオンズリーグ(CL)を制しているバルセロナだろう。フェイスブックで「antiBarcelona(アンチ・バルセロナ)」と打ち込んだだけで200以上のページが見つかるほど。だが、そんなバルサが「憎悪の対象NO・1チーム」の座を失うピンチに陥っている。

 最近のバルサは、ピッチ外での問題が噴出。アルゼンチン代表FWメッシの脱税容疑に始まり、ブラジル代表FWネイマール獲得に際する横領疑惑でロセイ会長が辞任。18歳以下の選手獲得に不正があったとして、国際サッカー連盟(FIFA)から今夏および来年1月の移籍市場での活動を禁じる処分を下された。

 それが影響してか、今季は欧州CLで準々決勝敗退。16日のスペイン国王杯決勝では宿敵Rマドリードに敗れ、現在国内リーグでも3位。まさかの無冠は目の前で、今季終了後のマルティノ監督退団は避けられない状況となっている。

 だがバルサの没落はまだまだ続くとみられる。現在、正GKバルデスが右膝靱帯(じんたい)損傷で離脱中。控えGKピントは今季で退団する意向だとスペイン紙に報じられている。すでにDFプジョルは今季終了後の退団を表明しており、FIFAの裁定が覆らない限り、守備陣が手薄なまま来季も戦わなければならないからだ。

 「倒れ続けるネイマールに主演男優賞を」「メッシはPK以外で得点できない」「teamofthereferees(審判のチーム=判定はすべてバルサ寄り)」などとからかわれ続けた、あの憎たらしいほど強いバルサはどこへ行ってしまったのだろう。

 Rマドリードのアンチェロッティ監督は国王杯決勝の後、「バルサの時代が終わったとは思わない。彼らは難しい相手だし、勝利に必要な幸運がほほ笑まないこともある」とライバルを擁護した。だが相手監督に気を使われていることが逆に時代の終わりを感じさせた。