マンチェスターUのデービッド・モイズ監督(50)が死神に取りつかれてしまった。これは比喩であり、実際の出来事でもある。

 20日の敵地エバートン戦。テレビを見た方はギョッとしたのではないだろうか。マンUベンチのすぐそばに、死神の仮装をしたサポーターが陣取り、モイズ監督を凝視。呪いをかけるようにオモチャのカマを向けていた。英地元各紙もこれを大々的に報道。メトロ紙(電子版)は20日、「11年間エバートンを率いたマンU・モイズ監督は、凍りつくような歓迎を受けた」と写真付きで紹介した。

 こんな格好のサポーターが、よくスタジアムに入ることができたものだと思ったが、モイズ監督にとっては試合内容の方が背筋の凍るものだったに違いない。古巣を相手に0-2で完敗。エバートンを相手にシーズン2敗するのは69年-70年シーズン以来、44年ぶりで、来季欧州チャンピオンズリーグ出場の可能性も完全に消えてしまった。

 マンUは、MF香川真司(25)MFフアン・マタ(25)FWウェイン・ルーニー(28)ら、ボールをつなぐことができる選手たちを先発させたが、無駄にパスを回すだけ。シーズン最低のボール保持率38%(ロイター通信調べ)にとどまったエバートンの高速カウンターに屈した。相手のマルティネス監督には「時として、人はピッチ上の現実を受け入れる必要がある」とまで言われてしまった。

 ただ、モイズ監督にとって悪夢のような一戦も、客観的に見れば妥当な結果だったのかもしれない。マンUが今季リーグ戦上位5チーム(リバプール、チェルシー、マンチェスターC、アーセナル、エバートン)に勝ったのは、1-0で勝利した昨年11月のアーセナル戦ただ1度のみ。現在の7位という順位もうなずける戦いぶりだ。

 欧州チャンピオンズリーグでなんとか準々決勝まで進み、来季続投の可能性を高めたモイズ監督だったが、この日の敗戦が致命傷となるかもしれない。テレグラフ紙(電子版)は20日、「モイズ監督が(マンU本拠地)オールドトラフォードの出口ドアへと近づいた」という原稿を掲載。すでに選手の信頼が失われていることを指摘し、解任の可能性について触れた。

 また、FWファンペルシーがチームに残留する条件としてオランダ代表ファンハール監督のマンU監督就任を求めているという報道もある。

 モイズ監督はエバートンの指揮官に就任した02年、「エバートンをマンUに勝てるチームにする。私はウソはつかない」と宣言したといわれている。そして今年、エバートンはマンUに勝てるチームとなった(モイズ監督抜きで)。サポーターの間では「有言実行の男モイズ」と皮肉を込めた冗談が飛び交う始末。このままチームを去ることになってしまうのか注目が集まる。