オランダ代表をW杯ブラジル大会3位に導き、今季からマンチェスターUの指揮を執るルイス・ファンハール監督(62)が、正式就任から5日ほどで、いきなり「らしさ」を発揮した。

 マンUは現在、米ロサンゼルスでキャンプ中。23日(日本時間24日)にプレシーズン初戦となる米MLSギャラクシー戦を行い、その後、ローマ、インテルミラノ、Rマドリードらと戦う、国際チャンピオンズ杯に突入する。

 だが同大会で決勝戦にまで進出すると、英国からの往復を含めた総移動距離は1万3500マイル(約2万1700キロ)にもおよぶ。同監督は22日の練習後、仏頂面でこの日程にかみついた。

 ファンハール監督 長距離移動になるし、時差もある。シーズン前の準備として、とても良いものだとは思わない。だがスケジュールはすでに決まっており、受け入れなければならない。そしてこのキャンプをシーズンへの良い準備にするため、チームは私のルールを受け入れなければならない。

 ファンハール監督は就任会見で「スポンサーは大事」と話し、クラブの商業的活動に一定の理解を示していた。加えてマンUのオーナーは米国人のグレーザー家。シーズン前の米ツアーを批判するのは、あまり得策ではないと思われた。だが「アイアン・チューリップ(鉄のチューリップ)」と呼ばれるほど頑固で、確固たる信念を持つファンハール監督にとって、遠い北米での「巡業」は我慢ならなかったようだ。

 同監督はその強烈な個性で、これまで多くの監督、選手と対立してきた。英BBC(電子版)が先日、ファンハール監督の「対立の歴史」について報道。バルセロナ監督時には「左サイドではなく、トップ下としてプレーしたい」と要求したリバウドをベンチに干し、母国の英雄クライフ氏とは性格が正反対で犬猿の仲。Bミュンヘン監督時代に自著を出版した際、序文を書いてもらった当時のウリ・ヘーネス会長に向かって「この本から学んでほしい。君らにとってこれを読むことは重要なことだ」と言い放ったこともあるという。

 だが、過去の名声が地に落ちた今のマンUには、これくらいアクが強い指揮官が必要なのかもしれない。ビディッチとエブラのDFコンビが移籍し、ルーニー、ファンペルシー以外、強いキャプテンシーを持ってチームをけん引できるような選手はいなくなった。現状のマンUは、ファンハール監督のもと、一瞬たりとも気の抜けないような厳しい練習を課せられ、有名サッカー選手としてのエゴも封じられ、謙虚に、誠実に試合に臨んだ方が結果が出るはずだ。