マンチェスターCのアルゼンチン代表FWセルヒオ・アグエロ(26)は「簡単には倒れない男」として知られている。優勝を決めた11-12年シーズン最終戦・クイーンズパーク戦でのゴールも、ペナルティーエリア内で相手DFに足を引っ掛けられたが、ひるまずにシュートを打った結果だった。

 アグエロが英ミラー紙(電子版)に手記を寄稿し、「なぜわざと倒れないのか」ということを説明している。最近ではブラジル代表FWネイマールが「あまりに簡単に倒れすぎる男」として批判の対象となっているが、アグエロのサッカーへの取り組み、考え方がとても印象的なので、ここに一部を紹介したい。

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 僕にはわざと倒れたり、主審をあざむいたりすることが理解できない。そんなプレーはしたくないんだ。

 もちろん多くの選手がそれをやっているのは知っている。自分だって、スピードに乗って2~3人を抜いた後にタックルを受け、転倒を余儀なくされることもある。

 でも、そんなのは僕のプレーじゃない。それはプライドの問題だ。DFに追いつかれても、最後の最後までゴールを目指して進みたいからね。

 友人や家族から『なんで倒れないんだ? PKをもらえただろ?』って聞かれることもある。でも正直に言うと、どうやって倒れたらいいかも分からないんだ。だから、もしやったら、主審にバレてイエローカードだろうな。

 子供の頃の出来事が僕のプレースタイルを決定したのかもしれない。よく家の隣のデコボコな空き地でプレーをしていた。だから自然とバランスを取るのがうまく、倒れにくくなった。

 それに、空き地には主審はいないだろ! だから倒れても意味がないんだよ。プレー続行で、FKなんかもらえないからさ。

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 よく、日本のサッカーには「マリーシア(ずる賢さ)」が足りないと言われる。だが、主審の目をあざむくようなプレーが、サッカー本来の魅力を奪っては本末転倒だと思う。我々がネイマールに感動するのは、「そんなことできるの?」という想像をはるかに超えたプレーによるのであって、弱々しく倒れてPKを獲得する姿ではない。

 プレミアリーグが世界最高のリーグと言われる一因は、接触プレーでも主審が簡単にはファウルを取らず、お互いの意地が激しくぶつかり合う、男くさいリーグだから。アグエロのプレースタイルは、まさにプレミア向きと言えるだろう。