フランス1部パリサンジェルマンのスウェーデン代表FWズラタン・イブラヒモビッチ(33)が、いきなり50個ものタトゥーを体に加え、周囲をびっくりさせた。

 14日カン戦でのこと。前半2分に先制ゴールを決めると、おもむろにユニホームを脱ぎ、胸からおなかの部分にかけてびっしりと描かれた新タトゥーを披露した。

 当然、イエローカードをもらってしまったが、イブラには、そこまでしてもタトゥーを披露したい強い思いがあった。

 翌日、記者会見に姿を現したイブラは、体に描かれていたものが人の名前だと説明した。「あのタトゥーを見せた後、みんなに『あれは何なんだ?』と聞かれた。オレは時間がたつと消えるインクで、50人の実在の人たちの名前を入れた。世界中で飢餓に苦しんでいる人たちの名前だ」。

 イブラは、食糧欠乏国への食糧援助や、天災などの被災国に対して緊急援助を行う国際連合世界食糧計画(United Nations World Food Programme=WFP)の活動に賛同。自らの体に名前を刻むことで、飢えに苦しむ人々に目を向けるきっかけをつくろうと考えたという。

 イブラは「オレがどこへ行っても人々は応援してくれる。でも世界には、だれからも応援されず、飢餓に苦しむ8億500万もの人たちがいる。多くは子供たちだ。彼らは戦争や自然災害、貧困に苦しんでいる」と説明。

 その上で「オレには世界中にサポーターがいる。今日からはそのサポートを、本当に援助を必要としている人にも向けてほしい。いつでもオレを見たら、(苦しんでいる)彼らを思い出してほしい」と訴えた。

 会見に同席したWFPのカテナ・ディレクターは「誰かがこういったシンプルな行動で、どんな境界線も越え、メッセージを伝えてくれることを願っていました。ズラタンがこれに賛同してくれたこと、そしてパリサンジェルマンが許可してくれたことに感謝します」と話した。

 イブラは「オレたちが一緒になって世界中の指導者に働きかければ、飢餓の問題は解決できると思う」と力を込める。現在も世界のどこかで戦争は続き、テロで命を落とす人も後を絶たない。だが、イブラのようなポジティブな姿勢を我々も見習えば、世界は違ったものに変わってくるかもしれない。