日本代表MF香川真司が所属するドルトムントのガボン代表FWピエール・エメリック・オーバメヤンに、ゴール後のパフォーマンス禁止令が出された。

 専門誌「スポーツビルト」によると、オーバメヤンが幼少期に熱中した選手は、Rマドリードなどで活躍した元メキシコ代表FWウーゴ・サンチェス。得点を量産し、華麗なハンドスプリングで宙を舞うその姿は、サッカーを始めたばかりのオーバメヤンに強烈な印象を与えた。同選手が現在得点後に披露する前方宙返りは、そんな伝説的ストライカーにルーツがあるという。

 しかし、「けがをしたら困るので、前方宙返りをやめるように」と言い渡したのは、ガボンサッカー連盟のピエール・アラン・モンギュンギ会長だった。今月8日、アフリカ年間最優秀選手賞に輝いたオーバメヤンは、いわば同国サッカー界にとって宝のような存在である。会長が「不必要なリスクは避けたい」と思うのは当然だろう。

 この一報を聞いたスポーツビルト誌が、ハンブルクに拠点を置くスポーツ医学の専門医ベルント・カベルカ氏に「一体どれくらい危険なのか?」と質問したところ、同氏からはこんな答えが返ってきている。

 「前方宙返りでうまく着地するためには、かなり高く飛ばなければならない。ただし、その際に肉離れを起こす危険性があり、最悪の場合アキレス腱断裂も起こりうる。さらには、着地に失敗して頸椎損傷、そして下半身不随になってしまう恐れもあるからね。もし私が彼の監督を務めているのなら、前方宙返りのパフォーマンスはやめさせるだろう」

 ドルトムントを昨シーズンまで率いていたユルゲン・クロップ前監督は、このリスクを看過できず、モンギュンギ会長と同じくオーバメヤンにパフォーマンス禁止令を出していた。しかし同選手は「もちろん、危険がゼロだとは思っていない。だから自分のコンディションが良い時にしかやらない」と、トーマス・トゥヘル現監督になって以降はこれを解禁している。

 ところが、同じく前方宙返りをパフォーマンスとする元ドイツ代表FWミロスラフ・クローゼは2008年、着地に失敗し太ももの筋肉を負傷。数週間にわたって戦列を離れることになった。また記憶に新しいところでは2014年10月、インドで23歳のサッカー選手がゴールを決めた後の宙返りで頭から落下し、脊椎損傷が原因でそのまま亡くなってしまうという不幸な事件も起きている。

 これまでのように前方宙返りを強硬に行うのか、それとも新たなパフォーマンスを考え付くのか-オーバメヤンが見せるゴール後の動きに注目だ。