以前から「2018年夏に現役を引退する」と表明していた、Bミュンヘン所属フィリップ・ラーム。しかし同選手は最近になり、「気持ちに変化が出れば今シーズン限りでの引退もありうる」という内容の発言をしている。

 Bミュンヘンでは今年7月、マティアス・ザマー氏が健康上の理由で辞任して以降、スポーツディレクター不在の状態が続いている。しかし、その候補の1人に数えられているのが“引退後のラーム”。カール・ハインツ・ルンメニゲ社長も「ラームが引退後、Bミュンヘンのスポーツディレクターとして残ってくれたら非常に素晴らしい」と、公の場で話していた。

 しかし、かつてBミュンヘンで主将を務めていたオリバー・カーン氏は、ラームの同ポスト就任に否定的だ。

 カーン氏は専門誌「スポーツビルト」に対し、「彼がBミュンヘンで要職に就けるのは、Bミュンヘンのキャプテンであり、そしてドイツ代表でもチームを引っ張る働きを見せたからだ。(ラームはサッカー業のかたわら複数企業の運営に携わっているが)企業家としての能力を買われているわけではない。どこかのサッカークラブでのマネジメント経験がなければ、Bミュンヘンのようなビッグクラブでスポーツディレクターを務めるのは非常に難しい。ラームが失敗する可能性は、決して低くないよ」とコメントしている。

 ここで思い出されるのは6年半前、ヨアヒム・レーブ監督がラームをドイツ代表主将に任命した時のことだ。現役時代に同代表でキャプテンを経験した2人の重鎮、ベルティ・フォクツ氏とローター・マテウス氏はそれぞれ、「非常に良い選択だ。彼の主将就任こそ、唯一の正しい解決方法だ」、「フィリップはピッチの中だけでなく、ピッチ外でも広くチームを見渡すことができる」と太鼓判を押していたが、これに反対したのはカーン氏だった。

 ミュンヘンの地元紙「tz」に対して当時の同氏は、「彼がこの任務をまっとうできるか分からない。チームを率いる能力があることを、彼は大会中に証明しなければならない」と話していたが、その厳しい見方は杞憂(きゆう)に終わり、ラームはその後ドイツ代表を4年以上けん引。その集大成として2014年ブラジルW杯では、ついに優勝を勝ち取った。

 もちろん「まだまだ現役を続けてほしい」と願うファンも多いが、ラームのSD就任に関するうわさをネガティブに見ている者は少数。6年半前のジンクスを考えると、Bミュンヘンはラームのために、同職を空白のままにしておいたほうが良いのかもしれない。