昨年11月、Bミュンヘンのトップに舞い戻ってきたウリ・ヘーネス会長が、自身の体験した刑務所生活の詳細について、一般紙「ベルト」に語っている。

 脱税の罪により2014年3月、禁錮3年6カ月の実刑判決を受けたヘーネス会長だったが、刑務所で模範的な振舞いをしていたため、収監から1年未満で半自由拘禁囚(昼間は一般企業で働き、夕方頃に刑務所へ戻る囚人)となり、2015年初めからBミュンヘンの育成部で勤務を開始。そして昨年2月29日、刑期を短縮され、晴れて自由の身となった。

 毎朝自主的に5時頃起床しては運動で汗を流し、食事も少なめに摂っていたおかげで20キロの減量に成功したというヘーネス会長だが、彼にとって獄中での唯一の望みは「早くここから出たい」ということだった。

 「私は囚人の中でベストであることを試みた。自分が掲げていた目標、つまり『刑期を半分にすること』に向かって、努力しなければならなかった」

 しかし、Bミュンヘンを世界的ビッグクラブに成長させ、時に物議を醸す発言もしていた有名人であるだけに、刑務所での日々はそう簡単にはいかなかった。他の囚人から挑発されたり、揶揄されたりすることも少なくなかったようだ。

 「とにかく冷静さを保つ必要があった。ひどいことを言われても自分を抑えなければならなかった」

 では、ヘーネス会長が受けた仕打ちの中で最もひどいこととは、一体なんだったのだろうか。 「メディアに売って大金を得るためだろうが、囚人の中には、こっそり携帯電話を入手し、刑務所の中での私を写真に撮ろうとしている者もいた。その少し前まで私と一緒にトランプで遊んでいた人々が、私がシャワーを浴びているところを写真に撮ろうとしていたんだ。この経験は本当につらかったし、このような時に冷静でいるのはとても大変だった」

 そんなこともあり「あそこで信頼できる人間は少ししかいない。刑務所の中では、人間に対する考え方を時々捨てていた。なぜなら、非常に優れた“役者”も囚人の中には混ざっていたからだ」と、刑務所内で友情が芽生えることはほとんどなかったという。

 「人として大きく変わった」と話し、再び元の場所へはいあがってきた敏腕会長。Bミュンヘンに人生を捧げてきた男の物語は、これからも続いていく。