4日に行われたブンデスリーガ第19節ドルトムント対ライプツィヒで、ドルトムントの一部ファンが暴徒化し、ライプツィヒファンを襲撃、多数の負傷者が出た事件を受け、ドイツサッカー連盟(DFB)は10日、ドルトムントに処分を通達している。


 その内容は、罰金10万ユーロ(約1220万円)の他に、2万4454人収容可能なヨーロッパ最大の立ち見席、南側ゴール裏-通称“黄色い壁”-をリーグ戦1試合限定で閉鎖すること。同クラブはこれに対し13日昼まで異議申し立てが可能であるが、今のところ、この判決を受け入れる見通しが強い。


 試合の翌日以降、大衆紙「ビルト」は連日この騒動について触れ、ライプツィヒファンの生々しい声を掲載している。


 取材を受けた21歳の女性ジェシカさんによれば「唾をかけられただけでなく、石や瓶も飛んできた。過去に何度もアウェーへ応援に行っているけど、ここまでひどいのは今回が初めて」だったそうで、50歳男性のウーベさんは、孫の見ている前でドルトムントファンに顔面を殴打され鼻骨を骨折。「死の恐怖すら感じた」と、その状況について語っている。性別や年齢に関係なく、すべてのライプツィヒファンが危険にさらされていたようだ。


 これだけではない。キックオフ直前、南側ゴール裏のサポーターは、それこそ目を覆いたくなるような数々の汚い言葉をバナーに記し、まるで自分たちこそが正義であるかのようにそれらを掲げていた。ビルト紙の言葉を借りるならば、そこは“黄色い壁”ではなく、もはや“恥の壁”だった。


 ドルトムントのハンス・ヨアヒム・バツケCEOは騒動後、「全力を尽くして犯人を探し出す」と話し、すぐさま火消しに動いたが、ドイツ代表ヨアヒム・レーブ監督はニーダーザクセン州サッカー協会での行事に出席した際、これに言及し、「このような試合の前には、発言に慎重になるべき。あえてその人物の名前をあげることはしないが、“缶のクラブ”なんて言葉は、緊張感を和らげるのになんの効果ももたらさない。むしろその逆だ」と、バツケCEOを批判している。この“缶のクラブ”とは、昨年11月、同CEOが専門誌「スポーツビルト」のインタビューで「彼ら(ライプツィヒ)は年月をかけて発展してきたクラブではない。あそこでは“缶(レッドブル)”をプロモーションするためにサッカーがされている」と語ったことを指している。


 8日に開催されたドイツ杯3回戦ドルトムント対ヘルタの試合前、クラブを代表して謝罪する主将マルセル・シュメルツァーの動画が大型スクリーンに映し出され、多くのドルトムントサポーターも「gegen Gewalt(暴力反対)」と書かれたプラカードを手にしていた。しかしその一方で、シュメルツァーが悲しげに語っている姿を無視し、いつもと変わらずチャントを歌い続ける南側ゴール裏サポーターも多数いたことが、本当に残念でならない。


 「家族で安心して観戦できる」ことこそ、ブンデスリーガ最大の魅力だったはず。子供たちがプロの美技をスタジアムで目の当たりにできるその環境は、今や“若手の宝庫”と呼ばれるようになったドイツサッカー界と、決して無関係ではないはずだ。


 スタジアムにこれ以上暴力が蔓延しないよう、今後もDFBには厳しい態度を取り続けてほしい。