<欧州選手権:ドイツ4-2ギリシャ>◇準々決勝◇22日◇グダニスク

 ドイツが早くも「かく乱作戦」だ。好調だったFWゴメスら攻撃的選手3人を入れ替えた布陣で臨み、快勝した。相手の予想を裏切る狙いは的中し、代わって先発した3人のうちFWクローゼとMFロイスが得点。公式戦15連勝という新記録で準決勝へ駒を進めただけでなく、ゴメスらの疲労を軽減、今後の対戦相手にも先発布陣を読みにくくさせる効果も生んだ。16年ぶり4度目の優勝に向け、レーウ監督の戦略がさえている。

 レーウ監督のシナリオは大胆かつ緻密だった。1次リーグすべて先発のゴメス、右MFミュラー、左MFポドルスキを外した。3人とも好調で故障もない。代わってクローゼ、ロイス、シュルレが今大会初先発だ。「好調時は布陣はいじらない」のセオリーと逆行。現地メディアやギリシャのサントス監督だけでなく、ゴメス自身も「驚いた」という。

 「相手の裏をかく必要があったからね」と、レーウ監督は明かした。ギリシャが各選手の特徴を把握し、対策を練ったのを逆手にとった。キックオフ直後の相手守備陣は混乱した。

 選手層あっての選択だ。登録23選手は「質の高いチームが2つ編成できる」といわれるほど。疲れのない3選手は前線で躍動し、守備も献身的だった。チームは引いて守る相手に対し、ミドルシュート、鮮やかな連係、セットプレー、波状攻撃と、4個の得点バリエーションを披露した。

 この日の勝利だけではない。選手の疲労回復、緊張感持続にもつながる。何より今後の対戦相手は、これで布陣の予想が難しくなるのは確実だ。ゴメスは「次の先発?

 興味深いよね」ととぼけた。

 「駆け引きも必要だ」。レーウ監督の言葉は、前回大会、06年、10年W杯でいずれも準決勝に進みながら優勝できなかったという反省から学んだものだろう。主要大会では最多となる公式戦15連勝も、タイトルへの通過点。力でねじ伏せるだけが、ドイツの強さじゃない。