<クラブW杯:マンチェスターU(イングランド)1-0LDUキト(エクアドル)>◇21日◇横浜◇決勝

 08年バロンドール(世界最優秀選手)に輝いたMFクリスティアーノ・ロナウド(23)が、マンチェスターU(イングランド)を9年ぶりの世界一に導いた。トヨタ

 クラブW杯決勝のLDUキト(エクアドル)戦で、FWウェイン・ルーニー(23)の決勝点をアシストし、チームを1-0の勝利に導いた。伝統のエース番号「7」を引き継ぐ男は、バロンドールに続き、クラブ世界一の栄誉も手にした。ルーニーは大会3ゴールで得点王となり、MVPを獲得した。

 世界一を告げるホイッスルが鳴る。その瞬間、C・ロナウドはピッチで大の字に転がり、天に向かってガッツポーズした。夜空から降り注ぐ、6万8682人の大歓声を体全体で受け止めた。徹底マークに遭い、何度もピッチに倒されながら、決してひるまない。「厳しいゲームだった。でも少ないチャンスを生かしたのが、うちのチームだったね」と笑った。

 一瞬の判断が勝負を決めた。後半28分、ゴール前中央でMFキャリックのパスを受ける。右足でいったんキープし、DF2人を引きつける。その瞬間、左サイドへ走り込むルーニーの姿を見逃さなかった。柔らかなタッチの左足アウトサイドでパスを転がす。自らをおとりに絶妙のラストパス。受けたルーニーは、逆サイドのゴールネットへボールを送り込むだけだった。

 C・ロナウドが背負う「7番」は、マンUにとって特別な意味がある。欧州初制覇の切り札となったベスト、26年ぶりの国内リーグ優勝に導いたロブソン、90年代の黄金期を築いた英雄カントナ、「トレブル(3冠=欧州CL、プレミア、FA杯)」を達成したベッカムら、偉大な選手たちが背負ってきた。サッカーの技術はもちろん、人としての魅力、カリスマ性が求められるクラブの象徴となる番号だ。

 05年にCM撮影で訪れたインドネシアで、スマトラ沖地震による津波被害の惨状にショックを受けた。オークションにユニホーム、シューズなどを出品し、自ら7万5000ユーロ(当時約1240万円)で落札、寄付した。今年11月ブラジルで起きた洪水被害には、チーム全員に呼びかけ、オークションにかけた収益金を全額送金。貧しい幼少期の記憶から「世界中の子どもたちを救いたい」という思いが強い。

 ビディッチ退場で10人となった苦境で真価を発揮し、チームを勝利へと導いた。ファーガソン監督からは「ロナウド、ルーニーが特別な仕事をしてくれると期待していた」とたたえられた。天性の才能におぼれることなく、誰よりも努力を重ねる。逆境から成り上がったヒーローは、世界一に甘えることなく、さらに高みを目指しているに違いない。【佐藤隆志】