元日本代表監督で四国リーグFC今治のオーナーを務める岡田武史氏(58)が、日本の育成年代にプレーの「型」を教え込むことの必要性を訴えた。バルセロナなど、世界屈指の名門も育成組織では独自のプレーモデルなどを徹底して注入している。日本サッカーのベースを固めるためにも「型」の重要性を強調した。同氏は22日(日本時間23日)のスペインリーグの「クラシコ」バルセロナ-Rマドリード戦の現地解説を務める。

 クラシコを目前に控えるバルセロナ。カンプノウを見下ろせるホテルの喫茶店で、岡田氏は育成年代における「型」の必要性を語った。スペインが世界に誇るバルセロナの関係者とも連携を取り、FC今治にも取り入れる「型」「プレーモデル」の意味を。

 岡田氏 型というのは「型にハメる」ための型でなく、状況に応じたプレーの共通認識、共有イメージというもの。日本は代表にしても、少しでも状況や環境が変わるとできなくなる。それは型がないから。17歳までにそれをしっかり教えることが大事。欧州は17歳までにしっかりしたベースを築く。18歳からは、それを発想で打ち破っていく。

 日本の幼少期から育成年代の指導は、どちらかというと自由な発想や判断を優先する傾向が強い。ただ、岡田氏はバルセロナ関係者に「日本には(型が)ないのか? バルセロナにはあるぞ」と言われたという。W杯ブラジル大会で日本代表が状況に応じた柔軟な戦い方ができないという課題を突きつけられた。ただ、数学に例えれば基本公式(型)を知らずに、応用問題を解けといわれても、できなくて当然だろう。

 岡田氏 バイエルンには300ページのメソッドがあるという。そのうちプレー面は半分くらいだけど。バルセロナはこんなに(30センチの厚さを手で示す)あると言っていた。育成年代でそれほどのベースを築くから、トップに上がった時にいろいろな発想や判断をもとに応用ができる。

 1月のアジア杯1次リーグのヨルダン戦で日本代表FW岡崎がスルーパスに反応してシュート。相手GKがはじいたボールを、猛然と逆サイドをダッシュした本田が押し込み得点した。だが、準々決勝UAE戦で似た状況が生じた時、本田は走り込んでいなかった。

 岡田氏 いつも、どのような状況でも、「こういう時はこう!」とイメージが共有できるものが必要。

 岡田氏には、現バイエルン監督のグアルディオラが率いた数年前のバルセロナの印象が強く残っている。育成年代の下部組織で「バルサ・メソッド」をたたき込まれた選手たちが有能な指揮官のもとで輝いた。

 岡田氏 日本にとってヒントは多い。型というかメソッドの部分、常識にとらわれない部分。日本は釜本(邦茂)さん以来、点取り屋が出てこないといわれているけど、GKと1対1で決められないなら、2対1、3対1をつくる共通認識があればいい。ボールを保持することが一番じゃなくて、得点が一番なんだから。

 FC今治では「岡田メソッド」を確立して育成年代を鍛え上げる。その根幹にはバルサ流がある。22日のクラシコでも、その一端を目にすることができる。【取材・構成=菅家大輔】

 ◆バルセロナの育成組織 ラ・マシアと称される。もともとはカンプノウに隣接する旧選手寮の名前。79年に選手寮が育成組織の選手寮として建て替えられて以来、海外からも多くの選手が入所。グアルディオラ、メッシ、イニエスタ、シャビ、ブスケツ、プジョルらそうそうたる選手を輩出。