汚職事件の逆風をはね返して5選を決め「レッツゴー、FIFA!」と叫んだ総会から、わずか4日後だった。1998年からトップを務めてきたブラッター会長が2日、強気の姿勢から一転して突然辞意を表明した。5月29日の会長選挙では「内輪」の支持を集めたが、その後も一向に収まらない外圧に耐えきれなくなった。

 約200の加盟協会の投票による信任が、ブラッター会長の「錦の御旗」だった。FIFAのマーケティング代理店だったISL社の倒産に端を発した自身の不正流用疑惑の渦中にあった2002年も、ワールドカップ(W杯)招致に絡む不正疑惑などで揺れていた4年前も、総会の投票で支持を勝ち取ったことで責任を問う声を封じた。

 直前にFIFA幹部による不正が発覚した今回も、会長選挙で半数を超える票を集め「総会は、私がこの問題を解決できる人間だという見解を示した」と言い切った。

 ただ、FIFA副会長を含む14人を米司法当局が起訴したという事実が世界に与えた衝撃は、関係者の活動停止といったサッカー界内部の処分で済ませてきた過去の疑惑とは別次元の大きさだった。欧州の政界や協賛企業からの反発は衰えないまま。右腕のバルク事務局長がW杯招致に絡む賄賂の送金に関わったとの報道が出た2日夕方の緊急記者会見で、17年続く長期政権の終わりを自ら告げた。

 「何よりもFIFAが大事。再選を目指して会長選挙に出馬したのも、組織にとってベストの選択と考えたからだ」とブラッター会長は言った。しかし、高まる批判に、会長にとどまることがFIFAにとって「ベスト」ではないと判断せざるを得なかったのだろう。