国際サッカー連盟(FIFA)の汚職事件が発覚し、2018年ワールドカップ(W杯)のホスト国ロシアは招致過程の疑惑や開催権取り消しの可能性も取りざたされた。それでも、開幕まで3年を切った各都市では着々と準備が進む。

 FIFAが醜聞に揺れる中、ロシアが全面的に支持してきたブラッター会長はあらためて辞任を表明し、来年2月に新会長の選挙が行われる。強固な後ろ盾を失う形になるが、同国のムトコ・スポーツ相は「会長辞任は脅威ではない。ロシアは計画通りにW杯へ向かう」と話し、「誰が次の会長になっても、この大会への協力は必ず得られるはずだ」と自信を示す。

 広大な国土の11都市12会場が祭典の舞台となる。開幕戦や決勝が予定されるモスクワのルジニキ競技場には、槌音が響く。1980年夏季五輪の主会場は歴史的価値の高い外壁を残しつつ、17年夏までに8万人超を収容する近代的施設に生まれ変わる。都市計画を担当するフスヌリン副市長は「既に工事は5割が終わった。おおむね順調だ」と強調。4000人の作業員を動員する工費3億5000万ユーロ(約472億5000万円)のスタジアム改修は、周辺の大規模な再開発とも連動した一大事業だ。

 ソチは昨年の冬季五輪に続く大イベントで、パホモフ市長は「五輪後は観光客が確実に増えた。W杯もソチを世界にアピールする好機」と、さらなる宿泊施設の拡充を図る。モスクワの南約千キロのロストフナドヌーではW杯に合わせて新空港を建設するなど、各地でスタジアム建設や改修と並行して巨費を投じたプロジェクトが進行中だ。

 10年12月に開催が決まったロシア、22年カタールの両大会は招致をめぐる不正の疑惑が絶えない。万が一にも、大会が実現しなければ影響や損失は計り知れない。

 W杯会場のカザニを首都とする中部タタルスタン共和国のレオノフ・スポーツ相は、サッカー界の腐敗に「答えられないし、われわれには関係がない。ただ、W杯が来ることを願うだけだ」と、大会準備に携わる人々の思いを代弁した。