Jリーグ王者の広島が、逆転で初の世界3位に輝いた。広州恒大(中国)との3位決定戦は勝利。前半4分に先制を許しながら、途中出場のブラジル人FWドウグラス(27)が後半に頭で2得点を挙げてアジア王者を破った。この試合の最優秀選手には、決勝点を演出したFW浅野拓磨(21)が選出された。日本勢の3位は07年浦和、08年G大阪以来3クラブ目で、賞金250万ドル(約3億円)を獲得した。

 最初は静まり返っていたスタンドが、終盤に差し掛かると一気にヒートアップした。決勝前の3位決定戦。広島の強さを、世界に証明した。決勝を待つバルセロナや、リバープレートのサポーターさえも巻き込んで、大合唱が場内に響く。異様な雰囲気の中、同点で迎えた後半38分。右クロスを合わせた浅野のヘディングシュートが、バーをたたく。そのはね返りを、ドウグラスが頭で押し込んだ。

 雑草軍団がつかんだ初の世界3位だ。先制されながらドウグラスが終盤2発。世界舞台で実現したアジアの頂上決戦で、金満クラブ広州恒大を黙らせた。

 森保監督 (今季は)うまくいかないこともたくさんあった。美しく勝つのは理想だが、ギリギリのせめぎ合いを制していこうとやってきた。美しく勝つよりタフに粘り強く。プロの世界は勝つことにこだわりを持たないといけなかった。

 スター選手はいない。今季から加入したドウグラスが在籍したのは徳島、京都とJ2が主戦場のクラブ。高卒3年目の浅野は、森保監督が手塩にかけて育てた選手だ。毎年、中心選手を移籍で失っても、クラブの理念と哲学を変えず、この位置までたどり着いた。

 今大会は準決勝リバープレート戦(16日)で惜敗しただけで3勝1敗。堂々とした戦いを披露した。浅野は「どんな相手にも負けないという気持ちで戦うことができた」。控え組も含めた総合力で快進撃を繰り広げ、佐藤は「誰が出ても、誰と組んでもやれる。チームの力がこの大会を通じて上がったし、大きな自信になった」と振り返った。

 今年は戦後70年の節目のシーズン。森保監督は「平和都市広島を世界に発信できたことをうれしく思う」。強く、たくましい、被爆地広島を、世界に伝えることができた。【益子浩一】

 ◆広州恒大の資金力 10年に恒大房産がスポンサー契約し、大手不動産企業の広州恒大地産集団のクラブ買収で莫大(ばくだい)な資金を得た。15年夏にトットナムからブラジル代表MFパウリーニョを1400万ユーロ(約18億2000万円)で獲得。期限付き移籍で獲得したFWロビーニョには年俸1200万ドル(約14億4000万円)を支払い、今では予算規模年間500億円ともいわれている。アジア・チャンピオンズリーグ準決勝のG大阪戦では、勝利給として300万元(約5640万円)、1ゴール差につき500万元(約9400万円)がボーナスとして選手に分配された。