FW岡崎慎司(30)の所属するレスターが、英国史上最大の番狂わせを成し遂げた。2日、2位トットナムがアウェーのチェルシー戦で引き分けたため、リーグ2戦を残して勝ち点7差となり、プレミアリーグ初制覇が決まった。試合がなかった岡崎は同僚らとFWバーディーの自宅でテレビ観戦。クラブ創設133年目の奇跡のような優勝に酔いしれた。一夜明けた3日、レスター市内で喜びを語った。

 カメラを向けられた岡崎のもとへ、奇跡を起こした仲間たちが次々と集まってきた。左にレギュラーを争ったFWウジョア、右にMFカンテ、遅れてやってきたFWバーディーの目には涙が光っていた。プロ12年目で初のリーグタイトル獲得。しかも、加入1年目で世界最高峰のプレミアを制した。何度喜んでも喜び切れない。いくら叫んでも叫び足りなかった。

 奇跡の歓喜を味わった場所は、ピッチではなくレスター近郊のバーディーの自宅リビングだった。勝ち点8差で追っていた2位トットナムが、チェルシーと引き分け以下なら優勝が決まる。運命の一戦をテレビで観戦するためにチームメートが集合していた。

 「こんなに他のチームを応援したことはない。みんなが、ある意味1つになってオレらも戦っていた」。トットナムが2点リードの展開から1点差となり「こっからだ!」と叫んだ。後半38分にチェルシーの同点弾が決まると「ボルテージが一番すごかった」。マンチェスターUにアウェーで引き分けて得た勝ち点1が、約30時間後に生きた。クラブ創設133年目の初優勝。ツイッターに「久しぶりに我を失うくらいうれしくて信じられない気持ちです」と記した。

 岡崎 奇跡の残留をして、次のシーズンはないかもしれないと思っていた選手ばかり。だから足元をしっかり見る選手の集まりだった。文句は言わないで自分たちで考えて、ラニエリ監督が自由を与えつつ、やるべきことを徹底した結果、すべてがフィットした。

 加入1年目で伝説の一員となった岡崎は、奇跡には欠かせない存在になっていた。清水からドイツを経てプレミアに挑戦。並行して日の丸を背負い100試合出場した。いつだって馬車馬のように走り回る姿に胸を打たれる人は少なくない。日本代表戦で帰国中、知人が白血病の女性ファンを連れて訪ねてきたことがあった。「自分なんかが少しでも力になれるなら」と、ユニホームにサインを書いて渡した。どんなに実績を積み重ねても、謙虚な姿勢は全く変わらない。

 岡崎 自分がいたから優勝できたとは考えていない。ただ、その一員であることを誇りに思う。一員として優勝に関われたことがうれしいし、いまだに信じられない。来季、また新たなスタート。次のヒーローがまた出てくると思うし、それが自分でいたい。

 英国史上最大の番狂わせを演じた岡崎は、さらなる奇跡を信じて、またピッチを走り回る。

 ◆レスター 正式名称はレスター・シティFC。イングランド中央部のレスターシャー州レスター(人口約30万人)で、1884年創設。本拠地はキングパワー・スタジアム(3万2312人収容)。01-02年シーズンまでプレミアリーグに所属し、03-04年に一時復帰して以降はチャンピオンシップ(2部)、リーグ1(3部)と低迷。08-09年にリーグ1に優勝、そして13-14年にチャンピオンシップを制し、14-15年からプレミアリーグに復帰。リーグ杯優勝3回。74~85年に元イングランド代表FWリネカーが在籍し、日本人では浦和MF阿部勇樹も10年8月から1年半、プレーしている。