ポルトガルのエース、クリスティアノ・ロナルド(31=Rマドリード)が2度泣いた。左膝を痛めて前半25分に無念の涙を流しながら負傷退場。だが、ベンチに戻ってサントス監督以上にげきを飛ばして味方を鼓舞すると、延長後半4分にFWエデル(28=リール)の決勝ゴールが生まれた。1-0でフランスを破って大会初優勝。準優勝に終わった自国開催の04年大会の悔しさを晴らし、うれし涙を浮かべた。

 試合終了の笛が鳴ると感情を抑えきれなかった。ロナルドはスタッフに抱きしめられると両手で顔を覆い、ピッチに倒れ込んで泣いた。19歳で初出場した自国開催の決勝でギリシャに屈し、涙を流してから12年。夢にまで見た瞬間に、ただただ涙が流れ落ちた。

 ロナルド ポルトガルは優勝に値した。オレにとって残念ながらプラン通りにはいかなかったけど仲間を信じていた。これ以上に素晴らしい瞬間は、サッカー人生でほとんどない。代表でどうしてもタイトルがほしかったんだ。この優勝を絶対に忘れない。

 悪夢が頭をよぎった。前半8分。ロナルドはフランスMFパイエから激しくチャージされ、左膝を抱えて倒れ込んだ。治療を受けてプレーを続行したが、同20分ごろから走れなくなった。治療後に再び戻ったが、25分にピッチに倒れ、担架で運び出された。悔し涙が止まらなかった。

 だが、主将の責任があった。ハーフタイムには「みんな聞いてくれ。オレたちは勝てる。だから最後まで力を合わせて戦い抜こう」と鼓舞した。試合中は膝にテープを巻いた姿で、何とテクニカルエリアに出て、サントス監督とともに大きなジェスチャーで指示。

 途中出場のエデルを「お前が決勝点を決める」と送り出すと、言葉どおり、延長後半にグラウンダーの右足ミドルで決勝ゴールが決まった。サントス監督も「ロッカー室での存在はとても重要だった。私をサポートしてくれ、チームに今日は我々の日だということを浸透させてくれた」と感謝した。

 ロナルドは今年、Rマドリードで欧州CLを制覇し、代表で欧州選手権を制した。同一年に両方で優勝したのは過去、12年のフェルナンドトレス、マタ(スペイン)ら7人しかいない。「この瞬間のために長い間やってきた。すべてのポルトガル人にとってこの成功はふさわしい」と話してカップを掲げたロナルドに、もう涙はなかった。【中野吉之伴通信員】

 ◇決勝戦でマン・オブ・ザ・マッチに輝いたポルトガル代表DFぺぺのコメント 難しい試合だった。早い時間帯に一番大事な選手がいなくなったから。クリスティアノ(ロナルド)がピッチを去った時、彼のためにも勝たなければならなかった。

 ◆過去、同一年に欧州チャンピオンズリーグ(前身を含む)と欧州選手権で優勝した選手 ▽64年 ルイス・スアレス(インテルミラノ、スペイン)▽88年 ハンス・ファン・ブロイケレン、ロナルド・クーマン、ベリー・ファン・アーレ、ジェラルド・ファネンブルグ(PSV、オランダ)▽12年 フェルナンドトレス、フアン・マタ(チェルシー、スペイン)。