プレーバック日刊スポーツ! 過去の10月15日付紙面を振り返ります。2006年の一面(東京版)は当時セルティックに所属していた中村俊輔による欧州1部リーグ日本人選手初のハットトリックでした。

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<スコットランドリーグ:セルティック4-1ダンディーU>◇2006年10月14日◇タナディスパーク

 セルティックMF中村俊輔(28)がダンディーU戦で、欧州1部リーグで日本人選手初のハットトリックを達成した。中村は横浜時代の98年11月14日の平塚戦以来、8年ぶり2度目の快挙。しかも、前半44分、後半3分、13分と、すべて流れの中から左足で決めた。17日の欧州チャンピオンズリーグ(CL)ベンフィカ戦(ホーム)へ、最高の自信をつけ、必勝を固く誓った。

 中村は握り締めた右拳を、額の上で軽く2度突き上げた後、笑みで顔をくしゃくしゃにした。MFスノとDFテルファーに両肩を抱きしめられ頭をたたかれた。後半13分、左足インサイドでMFヤロシクにパスを送ると、折り返しのボールをトラップし左足でゴール左上隅に突き刺した。

 「マリノスの時以来。でも今日はFKはなかった」。中村は胸を張った。自身でも8年前の3発を覚えていた。後半8、22、39分と決めたが1点目はFKだった。この日は中村の代名詞となったFKでの得点はなかった。3点とも流れの中でのゴール。それが誇らしかった。

 飽くなき向上心が今季、中村を変えた。悲願の初出場を果たしたW杯ドイツ大会は、体調を崩し1次リーグ敗退に涙した。世界との壁を痛感させられた中村は、今季開幕までの1カ月を肉体改造の期間に充てた。それでも飽き足らず「積み重ねだから。1、2年続けてやっと変われる」と肉体をいじめ続けている。

 技術の向上にも余念がない。得意の左足に加え、右足でも同レベルのキックを蹴ることができるように練習を続け、試合で試している。さらに同僚のFWマクギーディーやマロニーのプレーを見て、前線に突っかけるプレーの少なさを痛感した。「突っかけるドリブルができていない。今、習得中。攻撃的な技術がほしい。一発で決められるような能力をね」。

 その努力の積み重ねが3発につながった。前半44分には前線に突っかけ、1度はシュートを阻まれたが、立ち上がりヤロシクのヘッドを左足で合わせた。後半3分には、FWフェネホール・オフ・ヘッセリンクのヘッドのこぼれ球に飛び込み押し込んだ。「2点目が一番良かった。ヤン(VO・ヘッセリンク)があそこに落とすと思って予測した。無駄足かもしれないけど走り続けた。そういう点で勉強にもなった」とかみしめるように振り返った。

 17日には欧州CLで、ホームにベンフィカを迎え撃つ。1次リーグを突破するために、勝ち点3を是が非にでも取りたい。「強いから集中して臨む。ホームで勝ち点3を取れたら大きい。ホームが重要」。勝利を決定づけるための新たな、そして大きな武器を本番3日前のテストマッチで披露した。スコットランド2年目で進化を続ける中村が、チームと自分にとっての大一番に臨む。

 ◆中村のハットトリック 97年に横浜M(現横浜)入りして以来、公式戦で記録したのは1回だけ。98年11月14日の平塚とのJリーグ戦で後半8、22、39分にゴールし、4-2の勝利に貢献した。得意のFKを含み、すべて左足で決め「3得点は小学生以来」と喜んだ。02年の欧州移籍後も、これまでは2得点がリーグ戦で2度あるだけ。レジーナ時代の03年9月のブレシア戦と、セルティックでの今年4月のキルマーノック戦で記録している。

 ◆日本人選手の欧州クラブでのハットトリック 公式戦では過去に2例だけ。02年8月にフルハムのMF稲本潤一がインタートト杯決勝第2戦のボローニャ戦で達成したのが初。3-1の全得点を挙げ、チームに初タイトルをもたらした。今年4月にはグルノーブルのFW大黒将志がフランス2部リーグのバスティア戦で3得点。5-1の勝利に貢献した。欧州の1部リーグでは中村が初で、ブンデスリーガ通算26得点のFW奥寺康彦やセリエA、プレミアリーグで通算25得点のMF中田英寿も、最高で1試合2得点止まりだった。

※記録や表記は当時のもの