オランダ1部ヘーレンフェインに所属する日本代表MF小林祐希(24)が、これまでこだわっていた攻撃が中心のトップ下を封印し、11日のオマーン戦(親善試合、4-0で勝利)に日本代表として出場した、守備に重点を置くボランチに専念する。

 脱トップ下宣言で日本代表のレギュラーをつかみ取る。今夏に移籍したヘーレンフェインでも、4-3-3の左MF(逆三角形の前列左)、4-4-2のセントラルハーフでの出場とトップ下でプレーしていない。本人は以前から「陰で貢献するというよりは、目立ってきたタイプ」。「(トップ下を)虎視眈々(たんたん)と狙っている。ボランチで終わるつもりはない」と、トップ下への強い意欲を見せていた。

 19日のフィテッセ戦後、小林はトップ下への強いこだわりが、ボランチでのプレーにとっては邪魔になると主張した。「トップ下への未練を持ったままボランチをやったら、中途半端になってしまう」と話した。

 だが、トップ下を完全に諦めたわけではない。「ボランチとして極めてみます。その上で『トップ下をやってくれ』と言われる日が来たら、本当にうれしいです」とコメント。二兎(にと)を追う者は一兎をも得ず。まずはボランチのスペシャリストへ。新たにスタートする。

 小林の一問一答

 -フィテッセ戦からしばらく経ったが

 フィテッセ戦の自分を、もう1度、思い返してみたんです。確かに自分のプレーは悪くなかった。だけど、良くもないと思っちゃうのは何故なんだろうと…。その理由は、トップ下への自分のこだわりが強すぎるということ。だから、とりあえず今シーズンいっぱい、俺は一回、ボランチというポジションを愛してみて、このポジションを極めてみようとマインドを変えました。

 -それはヘーレンフェインでの役割と関係あるのか

 そう。「ボールより後ろにいて、サポートしてくれ」と(監督から)言われてるからね。そしたらボランチの思考を持ってないと、俺はいつまでたっても自分のプレーに満足できない。

 満足することって大事なんですよ。「今日の自分、全然ダメだった」と思うより、「今日は良かった。じゃあ、次にもっと良くするためにどうしよう」とポジティブな気持ちでレベルアップしていくことの方が自分に合ってます。

 フィテッセ戦を終えてから、いろいろ考えたんですけれど、ボランチとしてはちゃんとチームのバランスを取っていた。「ボランチのマインド」だと良かったけれど、「トップ下のマインド」だと満足できない試合でした。

 -日本代表のオマーン戦ではボランチとして途中出場し、ファーストプレーで相手のボールを奪って(味方へ)つなぎ、試合への入りが良かった

 入りだけじゃなく、ずっと良いリズムでプレーできたと思います。(守備時に)相手への寄せの距離、プレーのスピード、空中戦での競り合いなど、全てにおいてワンランク上がったと代表のスタッフも思ったはずです。「こいつ、意外とボランチも出来るな」ってね。最後はゴールも決めました。2列目から上がって、こぼれ球を拾って、トラップからズドン。ボランチらしいゴールだったよね。

 -(ボランチとして)クラブと代表、同じポジションでプレーする方が良いですしね

 そう。トップ下への未練を持ったままボランチをやったら、中途半端になってしまう。ボランチだったら行かないところでも、俺がトップ下への未練を持っていたら、ふらふら前に行っちゃって(後ろの)スペースを空けちゃったりね。

 ボランチも「ここは行くべき」という場面があって、それがオマーン戦のゴールだった。逆にトップ下も、下がらないといけない場面がある。ボランチだけどリスクを負って上がる時と、ボランチだからリスクを考えて止まる時。これが、トップ下の考えが強いと、ポジショニングが中途半端になってしまう。ここはトップ下への未練をきっぱり捨てて、ボランチというポジションを極めてみます。その上で「トップ下をやってくれ」と言われる日が来たら、本当にうれしいです。

 次、日本代表でスタメンを奪うためにどうするか。今回、(ボランチに専念することで)その布石は打った。次の試合(来年3月23日、W杯アジア最終予選、アウェーでのUAE戦)まで4カ月あるから、スタメンは不可能なことではない。体、頭、メンタル、技術。全てを2ランク、3ランクアップさせることが今の目標です。