◆岡崎慎司(30=レスター、FW)

 レスター岡崎の「強さ」が出た今季前半戦だった。今季は「得点への強いこだわり」を持ってシーズンをスタートしたが、ラニエリ監督からの要求は昨季同様に「得点ではなく、前線からのプレス」。考えの違いから序盤は試合に出られない苦しい時期もあったが、公式戦12試合連続出場するなど、徐々に信頼を取り戻している。

 プレミアリーグ移籍1年目の昨季、優勝した「ミラクル・レスター」で不動のレギュラーも、今季はFWのスリマニとムサ、2人のライバルが加入で激しいポジション争いを強いられたこともあり、出場機会が減少した。しかし、監督との考え方の相違が出場機会を得られない一番の要因だった。

 最たる例が、9月10日のリバプール戦。ロングシュートを打った岡崎に対してラニエリ監督からは「お前は(シュート)打つな。昨季、お前はあそこでパスを出していた。余計なことはしなかった」と批判された。4日後に行われた欧州チャンピオンズリーグ(CL)開幕節、クラブ・ブリュージュ戦ではベンチ外。9月20日に控え組で挑んだチェルシー戦(イングランド・リーグ杯)で2得点を決めるも、その後の2試合はベンチ入りしたものの出番なしと、ラニエリ監督からの先発構想から完全に外れた。

 苦しい時期に岡崎は「もうため息ですよ。何でこんなにおいしいというか、一番自分を出したら安定する試合展開なのに」(9月27日欧州CLポルト戦、出番なし)。「(前半で交代され)我慢して(交代しないで)くれてもよかったと思う」(11月6日リーグ戦ウェストブロミッジ戦、前半のみ出場)。このコメントだけ見ると一見、監督批判とも取れなくもない。だが、裏を返せば自分の力を信じ抜いているからこその発言。試合に出られない状況にも自分の信念を曲げない「強い心」の表れでもある。

●ベンチ入りすれば必ず自らの思い伝える

 また「忍耐力」もついた。出番がなければ、気持ちが乗らず、試合後は話しをしないで帰る選手が多い。だが岡崎は、ベンチ入りすれば必ずインタビューに答え、自分の思いを伝えた。選手としてベンチに座ることは本意ではない。不満もあるだろう。それでも「一生懸命頑張って、昨シーズンは出続けたわけで。だったら、それをやり抜くしかないし、絶対に(自分が)必要になる時がくるはず」と腐ることなく練習から監督にアピールを続けた。

 そんな岡崎にラニエリ監督は評価を覆した。チームが不調で残留争いを強いられていた10月22日のクリスタルパレス戦で岡崎は先発で出場すると、持ち前の献身的な前線からのプレスで走り回り、1得点も挙げて今季初のフル出場を果たした。7日後に行われたトットナム戦でも先発。ラニエリ監督に「私は偉大な2人の選手、シンジとカンテ(現在はチェルシー)を失っていたことを痛感した。だが、今は1人いる」。岡崎が昨季優勝の立役者だったことを、世界的名将に再認識させた瞬間だった。

 岡崎は公式戦20試合に出場し5得点(12月26日終了時点)。メッシ(バルセロナ)やロナルド(Rマドリード)のように、平均1試合1得点以上取るような選手ではない。スピードやテクニックでも劣っている。泥臭くチームのために一生懸命走る。彼らのように、得点という目に見える結果を出すFWとしての武器は違えど、自分のスタイルを貫く「強さ」で監督の信頼を取り戻した前半戦だった。

◆吉田麻也(28=サウサンプトン、DF)

 サウサンプトン吉田はリーグ戦でプレミア移籍後、最大のピンチに立たされている。今季で5シーズン目。1年目は32試合、2年目は一時レギュラーを獲得も、左膝の靱帯(じんたい)損傷で8試合にとどまった。3年目は22試合、4年目は20試合と出場したものの、今季は18節終了時点でリーグ戦わずか3試合の出場とピュエル監督から信頼を得られていない。

 基本的にはカップ戦要員として起用されている。だが、参加している欧州リーグとイングランド・リーグ杯の2大会、計9試合に全部でフル出場を果たしている。また、9試合で4失点と鉄壁の守備を構築。欧州リーグでは2位のベエルシェバに勝ち点で並んだものの3位で敗退したが、同リーグ杯では準決勝に進出し、自身イングランドでの初タイトルまであと2勝と迫っている。吉田は「今年はすごいチャンス。どこかでタイトルを取れたら最高」と息巻いている。

●不動のCBコンビの去就次第では定位置も

 現在リーグ戦でセンターバックをチームの主将DFフォンテと、プレミアリーグで評価を高めているDFファンダイクの2人と、プレミアリーグの中でもトップレベルのコンビだ。吉田にとって超えるためには高すぎる壁だが、前者は33歳と年齢的なこともあり、クラブからの契約延長はなし。契約が18年6月までと、残り1年半と迫っているため、クラブはお金になるなら主将を放出する可能性もある。

 また、ファンダイクについては、25歳の若さですでに完成されたセンターバック。マンチェスターUなど多くのクラブが獲得に興味を持っている。金満クラブからのメガオファーが届けば、クラブも移籍を容認せざるを得ない。

 不動のセンターバック・コンビの去就が不透明なだけに、後半戦で吉田がリーグ戦でもレギュラーをつかめる可能性はある。【上原健作】