ドルトムントMF香川真司(28)が意地を見せた。11日の試合前にチームバスが爆発の被害を受け、1日延期されたモナコ戦で1ゴール1アシスト。爆発のショックと厳重警備による緊張感の中で懸命にプレーした。2-3で敗れたが、後半39分の得点は第2戦での逆転4強へ望みをつなぐ大きな1点となった。香川は翌13日の練習後、複雑な心境を明かした。第2戦は19日に行われる。

 苦しい中で香川は底力を示した。0-2の後半12分、ゴール前でFWオバメヤンのパスに抜け出し、GKが飛び出してきたところで冷静に横パス。FWデンベレのゴールをお膳立てした。同39分には右クロスを受け、フェイントでDFを外して左足でゴール。跳び上がって右拳を握り、チームメートやサポーターと喜びを分かち合った。

 前日の爆発の記憶が鮮明に残り、スタジアムも異様なムードだった。事前に警察犬を使っての爆薬チェックがあり、開場後は小型小銃を抱えた防弾チョッキ姿の警官が5人1組でくまなく巡回。チームバスは警察車両の先導でいつもと違うルートを通った。試合後も警備の関係上、香川らは取材エリアを通らず、警官が取り囲む中で乗用車に分乗して引き揚げた。

 「試合できる状態ではなかった。それはみんな一緒だと思う」と心境を明かしたのは一夜明けたチーム練習後だった。15日にリーグ戦、19日にはモナコとの第2戦が控える。「試合は続くし、やれることをやるしかない。ただ、それ以上に大事なものは存在する。それほどの恐ろしいことを僕たちは経験してしまった」と神妙な面持ちで語った。

 自身のブログでは「バルトラのためにもなんとか勝利したかった」と、爆発による負傷で欠場したDFバルトラとのツーショット写真を掲載。敗れた悔しさはあるが、まだ1点差だ。MFシャヒンは「2点目はとても重要だった」と香川をたたえ、DFシュレーダーも「香川の活躍で第2戦へ希望を持てる」とした。

 失点も1点目はオフサイドを見逃されたような判定、2点目のオウンゴールはバルトラの代わりに出たDFベンダーが直前に足を踏まれ、スパイクが脱げかけた状態という不運なものだった。「今回はベストな状態ではなかったが、来週はベストを取り戻す」とトゥヘル監督。香川の奮闘を4強進出につなげたい。