メッスの日本代表GK川島永嗣(34)が、フランスリーグ初完封でチームを1部残留に導いた。アウェーのリール戦に初の2試合連続で先発起用されると、かつてハリルホジッチ監督が指揮した難敵をシャットアウト。2-0で勝ち点を42に伸ばし、残り2試合で18位ディジョンとの勝ち点差を9に広げた。今季序盤はクラブ、代表ともに「第3GK」から定位置を奪還。不屈の男がシーズン終盤に輝きを取り戻した。

 残留決定のピッチを川島が自力でつかみ取った。2試合連続で先発すると、ほえにほえる。味方の位置取りをフランス語で修正し、DFに「押し上げろ」を連発。前半31分にはスルーパスに勇敢に飛び出した。リールのポルトガル代表FWで、昨年の欧州選手権で優勝弾を決めた190センチのエデルが突っ込んでくる。それでも臆さずボールを押さえ、またほえた。フランス初完封でチームを12年ぶりの残留に導き「何が何でも結果がほしかった。ホッとした」と笑みをこぼした。

 はい上がった。メッスには昨年8月に加入も「第3GK」と発表される異例の立場。前半戦は1試合も出られずJ復帰も頭をよぎった。「去年の12月は本当に出ようか考えた。でも、やれる確信があって来たリーグアン(フランス1部)。出ないまま挑戦をやめられない」。

 日々の勝負は劣悪グラウンドの5部リーグ。「この年齢で18、19歳とリザーブリーグは…。正直、気持ちの良いものではなかった」が、腐らない姿勢がアンシュベルジェル監督の心を打つ。「試合に出られず容易でない中、彼が練習で見せるプレーと精神状態に満足した。エイジは偉大なプロフェッショナルだ」。4月のパリサンジェルマン戦でリーグ33試合目にして初出場すると、前節はナンシーとのダービーで初勝利。3戦目で完封し「残って良かった」と復活劇を喜んだ。

 代表でも第3GKから復権。3月のUAE、タイ戦で連続完封した。メッスとは来季も契約が残り、W杯へ足場は固まりつつある。15年に所属なしの不遇も味わった男は「浪人しなくて済む」と笑わせつつ「このレベルでやり続けたい」と自身の残留も示唆。大国フランスで進化を見いだす。【木下淳、松本愛香通信員】