ベルギー1部シントトロイデンの最高経営責任者(CEO)に前J1、FC東京GMの立石敬之氏(48)が就任し、29日に本拠スタイエンで会見を開いた。

 

 昨年12月に日本のネット関連企業DMM.comが株式の99・9%を取得したクラブのトップに立ち「この数カ月間、サポーターの皆さんには経営の方針などで心配をかけたかもしれません。まずは、この場を借りておわびいたします」。その上で「今まで経営をリードしてくれたドゥシャトレさん(会長)やフィリップ(前CEO)は素晴らしいリーダーシップを発揮して、ここまでクラブを発展させてくれました。彼らの作ったものを引き継ぎ、そこに我々のアイデアをどう加えていくか、頑張って努力していきたいと思います」とあいさつした。

 

 注目される経営方針については、まず「このクラブは我々(経営権を取得した日本人側)のものではないと最初に伝えておきたい。このクラブはファン、サポーター、この街のものだと思っています」と強調。同席したファイナンシャル部門の責任者、矢島孝如CFOとビジネスサイドの責任者、スタン・ニーセン(コマーシャル・ダイレクター)に「権限と責任を渡していきたい」と説明した。

 

 加えて、スポーツ・ダイレクター(強化責任者)のポスト新設も発表。「とても大事なポジションです。今日、間に合えば良かったのですが、何人かの候補に絞りました。今、交渉中ですので名前は伏せさせてもらいますが、近いうちに皆さんにお伝えしたいと思います」と、人選中であることを明かした。

 

 具体的なプランについては「5つの柱で考えている」と表明。<1>トップチーム強化<2>アカデミー充実<3>運営<4>ビジネス<5>スタジアムの技術革新、とした。

 

 真っ先に挙げたのは<1>だ。「日本、アジアから資金を集めてきます。ただし、ご存知の通りベルギーには5つの大きなクラブがあります。日本からの資金があったとしても、必ずしも、すぐそこに追いつけるとは思っていません。大事なのは『血と汗と涙』。サポーターが大事にしていることだと、こちらに来て習いました」と笑顔を見せ「フットボールのスタイルはハードワークです。そこは変えません。今、プレーオフ1(レギュラーシーズンの上位6チームによる優勝決定リーグ)を狙える位置にいます。3年かけて、常にSTVV(シントトロイデン)がプレーオフ1に入れるような、安定したチームをつくりたい」と抱負を語った。

 

 <2>は下部組織の充実だ。「ユース、アカデミーに関してはトップチームのメンバーを見ても分かる通り(昇格組は)現在1人だけです。1人でも多くトップチームのピッチに立たせられるよう、変えていきたい。本当の夢を言えば、11人のスターティングメンバー全員がアカデミー出身だったら最高です。ただし、すごく時間がかかりるもので1年、2年では結果は出ない。でも、今から準備をしないと花は咲きません。投資をしていく」と約束した。

 

 <3>に関しては「これも夢ですが、スタジアム(スタイエン=約1万4600人収容)を常に満員にしたい。だいたい今は平均4000人レベルの集客なので、まだまだ努力が必要。セキュリティーも、欧州連盟(UEFA)主催大会を開けるようなレベルにまで整備したい」と語り、近未来の欧州チャンピオンズリーグ出場を目指す。

 

 <4><5>についても地元メディアらに、期待に胸を膨らませながら説明した。クラブを発展させた先には、日本人選手・指導者の育成、日本サッカー強化という理想がある。過去にFW鈴木隆行やGK川島永嗣、現在はFW久保裕也やMF森岡亮太ら日本人選手が活躍するベルギー。そこでは前例のない日本人経営者として、立石CEOが新たな挑戦をスタートした。

 

 ◆シントトロイデン 1924年2月、ベルギー東部リンブルフ州でFCユニオンとFCゴールドスターが合併して創設。1部と2部を行き来し、15年に通算5度目の1部昇格を果たした。過去に所属した日本人選手は、17年1月まで在籍した小野裕二(現サガン鳥栖)。昨季はレギュラーシーズン12位。今季はプレーオフ1圏内の6位につけている。今月8日には、日本の東京五輪世代で17年U-20W杯代表のDF冨安健洋(19)が、J2アビスパ福岡から3年半契約の完全移籍で加入したことが発表された。