アーセナルのアーセン・ベンゲル監督(68)が今季限りでクラブから身を引くことを決断した。22年もの長期にわたる名将の足跡にあらためて触れておきたい。

 1996年10月にJ1名古屋グランパスの監督からアーセナルの指揮官に就任。当時のプレミアリーグでは屈強なFWにロングボールを出す「カウンター・サッカー」が主流だったが、ボールをつなぐ「ポゼッション・サッカー」で異彩を放ち、サポーターを魅了させた。

 戦術だけでなく、育成にもたけていることでも知られ、イタリアで結果を残せなかったアンリやビエラ、16歳でデビューさせたセスクらを世界的名手に育て上げた。他国から選手を獲得するスタイルで、日本からも稲本潤一や宮市亮を招き入れた。その一方で、スタメンにイングランド出身選手がいないことでも大きな話題となった。

 プレミアリーグ3度、FA杯7度など、1つのクラブで多くのタイトルを獲得した。中でも2003-04年シーズンの無敗優勝(26勝12分け)は、まさに偉業。5試合を残し、圧倒的な力で今季のリーグ優勝を達成したマンチェスター・シティーですら2敗を喫している。今季は6位に甘んじているが、ベンゲル監督が成し遂げた無敗優勝がいかに大記録かを示している、今季のプレミアリーグだともいえる。【上原健作】