ワールドカップ・ロシア大会の注目ストライカーの1人が、エジプト代表のFWモハメド・サラー(25=リバプール)だ。今季はプレミアリーグで32得点を挙げて得点王に輝き、イングランド・サッカー選手協会の年間最優秀選手賞などを受賞。クラブを13季ぶりの欧州CL決勝(日本時間27日)に導き、今年のバロンドールに推す声も高まっている。

 サラーの活躍はサッカーの垣根を越え、国内外に影響を与えている。今年3月のエジプト大統領選挙では、現職のシシ氏が約97%と圧倒的な得票で再選を果たしたが、地元メディアによると、なんと投票用紙にサラーの名前を書く国民が多数出現。SNSに投票用紙の写真をアップする者もいたという。もちろんこれは無効票だが、その得票数はシシ氏の唯一の対立候補だったムスタファ氏の得票数を上回っていたとされている。エジプト最大の新聞社、アフラーム紙のマフムード・サブリ副編集長(50)は「正確な数字は分からないので、うわさの範囲ではあるが、サラーは若者の将来の夢を背負う存在。エジプトの国民はヒーローが現れると、その気持ちを何かに表そうとする。それが出たのではないでしょうか」と推察した。

 隣国サウジアラビアでは、イスラム教の聖地メッカの副市長が、サラーにメッカの土地の一部を贈呈すると発表。現地メディアによると、ムスリムのサッカー選手として活躍するサラーをイスラム教の象徴的存在として扱いたい意向があり、その見返りとして与えるという。このような待遇は極めて異例で、サラーの活躍がイスラム圏に大きな影響を与えていることが分かる現象である。