【13年3月4日付・日刊スポーツ】<プレミアリーグ:マンチェスターU4-0ノリッジ>◇2日◇マンチェスター

 シンジがやっと主役になった!

 マンチェスターUの日本代表MF香川真司(23)がノリッジ戦でハットトリックを達成した。前半ロスタイムに昨年9月29日のトットナム戦以来22試合ぶり、今季3点目となる先制ゴールを挙げると、後半31分、42分にも得点。4―0快勝の立役者となった。ハットトリックはプレミアリーグでアジア人初、欧州主要1部でも日本人選手4人目(通算5度目)の快挙。5日のRマドリードとの欧州CL決勝トーナメント1回戦第2戦へ、大きなはずみとなった。

 帰ってきた。あの感覚が。後半42分、香川が送った縦パスが、FWルーニーを経て戻ってきた。前に転がるボール。DFは2人。その隙間をワンタッチで抜けた。トラップが大きい―。そう思ったGKが飛び出た。瞬間、体が加速した。2季で29得点した昨季までのドルトムント時代がよみがえる、真骨頂の突破。GKよりも一瞬早く触れて、浮かした。緩やかな軌道がゴールに収まったとき、アジア人初の偉業が完成した。

 「まさかハットトリックを取れるとは思っていなかったので、本当にうれしい。結果をなかなか残せていなかったので、そういう意味では勝利に貢献できたのかな、やっと…やっと」。感慨に浸った上で「(3点目は)良い形で自分の良さが生きて、ファーストタッチでグッと入って決めた」と自画自賛した。

 すべてのゴールに「技」を凝縮した。前半終了間際の先制点は、右クロスにFWファンペルシーが触れたボールを右足アウトサイドで打った。わずかなコースを見極めて、リーグ22戦ぶりの得点。「1点取って、気持ちが楽になった」。

 後半31分の2点目は、ルーニーからの横パス。そこに力はいらなかった。滑り込むDFとGKとは逆方向へ、右足で優しくなでただけ。そして3点目のループ。本拠地でリーグ通算400試合目の記念すべき日を飾り、ファーガソン監督は「素晴らしい。中でも2点目、3点目がすごく良かった。シンジにとっても素晴らしい日だ」と絶賛した。

 もがき続けた結果だった。昨年10月に左膝をけが。2カ月後に戻っても満足な結果は残せなかった。直前の2試合は出場機会もなし。「もちろん悔しかった。ただ、このチームはどんな選手もチャンスをもらえる。それを信じて『毎日の練習で結果を残すんだ』という気持ちを持ち続けるしかなかった。信じてやるしかなかった」。前を向いてやり続けた。その答えが「近い距離でプレーしよう」と話し合った、エースからの2アシストに表れていた。

 5日の欧州CL・Rマドリード戦を前に、背番号26を焼き付けた。だが「もっとシビアな戦いの中で存在意義を発揮していかないと、認められない」。これで終わりではない。戦いが、ようやく幕を開けた。