<ロシア杯:CSKAモスクワ2-0トルペド・モスクワ>◇14日◇ロシア・モスクワ

 【モスクワ=八反誠】CSKAモスクワの日本代表MF本田圭佑(24)が、4年後の14年W杯ブラジル大会に向けて早くもスタートを切った。ロシア杯初戦(アウェー)トルペド・モスクワ戦で、W杯南アフリカ大会の決勝トーナメント(T)1回戦パラグアイ戦以来、15日ぶりに公式戦に出場した。2日前にチーム合流したばかりでベンチスタートだったが、後半20分から途中出場。得点はなかったが、多彩な動きで攻撃に厚みをもたらした。試合は前半に2点を奪ったCSKAモスクワが勝った。

 本田の名前がコールされると敵地も沸いた。相手サポーターからも「ホンダ!」と声が飛ぶ。後半20分。背番号10のMFジャゴエフに代わってピッチに入り、強く望んでいたトップ下に。すぐに中盤でためをつくり、左サイドにスルーパスを供給。暑さから同23分に給水時間が設けられると、味方と積極的に連係を確認。その後は選手交代に伴い左サイドでもプレー。堂々とした振る舞いは、日本代表の姿と何ら変わりなかった。

 PK戦の末の敗退に涙を流したパラグアイ戦以来の実戦。W杯後は故郷大阪などで休暇を取り、11日にロシアに戻ったばかり。だが、日本滞在中も新たな1歩となる一戦に向け準備を進めてきた。「(W杯で)いい経験をしたけど、それを今後生かせるかどうかが大事」。殺到する個別取材やテレビ出演のオファーをすべて断った。休養明けということもあり、4月11日のアラニア・ウラジカフカス戦以来、移籍後2度目のスタメン落ち。それでも体のキレ、ボールタッチにブランクは感じられなかった。

 この日の舞台は活躍したW杯とはほど遠い環境だった。3部相当の相手の本拠地は空席が目立った。サッカー専用ではなく、トラックを併設されている上、その走路も老朽化で赤茶けていた。代表で務めた1トップとは役割も違ったが、何度も前線の空いたスペースを狙って鋭く走り込むなど、短い時間で持ち味を出した。

 W杯での活躍により注目度はさらにアップした。モスクワを拠点に世界90都市以上に就航するロシア国営の航空会社アエロフロートの機内誌にも登場。7月の最新号に『本田が奏でる』という見出しとともに掲載された。季刊で発行される日本路線限定の日本語版ではなく、ロシア語の全路線共通用。日本の顔はロシアの顔として認められている。日本人アスリートの特集は異例で同社関係者は「ロシアで注目されているフィギュアスケート選手の掲載も記憶にない。おそらく初めてではないか」と話した。

 得点には絡まなかったが、W杯を経てさらに存在感が増していた。セリエAの名門ACミランを筆頭に各国の強豪クラブが獲得を検討しているとされる。去就が注目を集める中「世界のHONDA」が、W杯後の初戦を白星で飾った。

 [2010年7月15日9時32分

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