<セリエA:インテルミラノ5-3ローマ>◇6日◇ミラノ

 【ミラノ(イタリア)=波平千種通信員】インテルミラノの日本代表DF長友佑都(24)が世界一クラブでのデビュー戦で、わずか15分間でインテルサポーターの心をつかんだ。快勝したホームのローマ戦に後半30分から出場すると、左サイドを積極的に攻め上がり、決定的なセンタリング2本を上げた。守備もノーミスで、ほぼ完璧なプレーを見せ、試合後は監督、選手、関係者から次々と称賛の声が上がった。この日は期待された先発こそ外れたが、定位置奪取へ大きな1歩を踏み出した。

 試合終了の笛に飛び切りの笑顔になった長友が、仲間たちと次々と抱擁した。MFカンビアッソ、FWエトー、MFモッタ…、全員が世界的スーパースター。世界一のクラブで日本人がついにその一員となった。インテルのスタッフの1人はその様子を見ながら「まるでアジアのマイコンだったな」と同僚の世界NO・1DFの名をつぶやいた。

 後半30分にピッチに立ったときは「心が震えた」。だが、気後れはなかった。出場直後の失点にも動じず、同34分には左サイドでFWミリトのパスを受けてドリブルで持ち込むと、左足でセンタリングを上げた。同43分にも左サイドでボールを受けたエトーを追い越し、左のスペースでパスを受けてチャンスを作った。

 いずれもゴールにはつながらなかったが、積極的な動きに6万人を超えるサポーターから大歓声が上がった。守っても相手のクロスに体を入れて防ぐなど奮闘。試合後も興奮気味に「全然あがらなかった。いい緊張感でうまく入っていけた。出て行けるタイミングがあるなら、どんどん行こうという気持ちでやった」と振り返った。

 チームに溶け込んでいることを象徴する場面があった。後半33分に左サイドを上がってオフサイドを取られた後、カンビアッソに声をかけられ、話し合った。「次からこのタイミングで出れば大丈夫だ」とのアドバイス。その後はきっちり修正して2度のチャンスメークにつなげ、信頼に応えた。同45分のカンビアッソのゴール後は真っ先に駆けつけ、頭を抱いて祝福した。

 レオナルド監督は「長友は私の要求したことにちゃんと応えてくれた。攻守によくやってスピードも見せた」と高評価した。イタリア紙トゥット・スポルトは「時速100キロのスピードで2度ほど上がった」、コリエレ・デッラ・セーラ紙は「観客はまるでマイコンかのように長友に拍手を送った」と伝えた。

 イタリアに来る前、目標の「世界一のサイドバック」の1人に挙げたマイコンと一緒にプレーすることもできた。「切磋琢磨(せっさたくま)してやれるぐらいじゃないと。憧れとは、もう言いたくない」。ビッグクラブの一員の責任を果たすためには、自分も世界レベルのプレーを続けるしかない。その先にレギュラーの座が待っている。

 [2011年2月8日8時45分

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