<セリエA:インテルミラノ5-2ジェノア>◇6日◇ミラノ

 インテルミラノDF長友佑都(24)が日本人選手の力を世界に認めさせた。ジェノア戦に後半33分から出場し、同39分に左足でイタリア移籍後初ゴールを決め、勝利に貢献。ビッグクラブでは日本人は通用しないというイタリアでの偏見を、限られたチャンスに結果を出すことで打ち破った。ゴール後は長友を信じて起用し続けてくれたレオナルド監督(41)の元に真っ先に駆けつけ、感謝の気持ちを示した。

 思いの詰まったゴールだった。ペナルティーエリア中央に走り込んだ長友は、相手MFロッシを背負ってパスを受けた。反転して相手を突き放し、左足を振り抜いた。初ゴールを祝福するMFスナイダーをふりほどいて、ベンチへまっしぐら。「ユート!

 ナガトモ!」のコールが鳴り響く中、真っ先にレオナルド監督に抱きついた。「点を取れて感謝の思いがあった。いろいろお世話になっているから」と振り返った。

 長友以上に、レオナルド監督も喜んだ。「(周囲では)当初は彼に対して先入観もあったが、それを超えられたので私も満足している」と話した。イタリア国内では「日本人はビッグクラブで通用するレベルにない」という偏見があった。同監督はJ1鹿島でのプレー経験から、日本人の勤勉さ、向上心を高評価し、長友を獲得した。日本人選手への誤った評価を覆すためのチャンスを与え、長友も応えてきた。「長友は私に情熱を与えてくれる」とも話した。師弟タッグで、ビッグクラブのカベを1つ乗り越えた。

 イタリア各紙も長友に6・5~7・0とインテル移籍後最高評価(1~10点で数が多い方が上)を与えた。ガゼッタ・デロ・スポルトは「(ACミランのFW)インザギのように反転しながらゴールした。彼がボールに触るとサンシーロが沸く」とライバルチームの名FWになぞらえた。ラ・レプブリカは「インテルで初めてのゴール。それが4-1からのものでも、日本のサッカーにとって大きな出来事だ」と日本サッカー界の成長ぶりを認めた。

 長友はインテル移籍時に「世界一のサイドバックになる」という個人の目標とともに「絶対にここで活躍して日本のレベルが高いことを広めていきたい」とも誓った。長友の戦いは「日本」を背負っての戦いだ。昨年のW杯南ア大会ベスト16、アジア杯優勝でも変わらなかった偏見を、インテルでのプレーで覆した。【波平千種通信員】