なでしこジャパンに思わぬ追い風が吹いた!

 国際サッカー連盟(FIFA)は25日、規律委員会を開き、女子W杯ドイツ大会でのドーピング検査で陽性反応を示した北朝鮮代表5選手に活動停止処分を科した。9月1日開幕のロンドン五輪アジア最終予選(中国・済南)の出場もできない。GK1人含む5選手はいずれもW杯の守備の主力で戦力ダウンは必至。同予選4戦目(同8日)に北朝鮮と対戦する日本代表にとっては「朗報」とも言えるが、合宿先の岡山・美作市内での練習を終えた選手らは「油断はできない」と逆に気を引き締めた。

 五輪アジア最終予選開幕まで1週間を切った25日、FIFAが北朝鮮への厳罰に踏み切った。次回15年女子W杯カナダ大会の出場権剥奪とともに、ドーピング検査でステロイド(筋肉増強剤)に陽性反応を示した全5選手に14~18カ月の活動停止処分を決めた。

 女子W杯1次リーグ2試合終了後のドーピング検査で北朝鮮の2選手から陽性反応が出た。FIFAは同3試合終了後に北朝鮮全選手の検査を実施。さらに3選手が陽性反応を示した。計5選手からはステロイドの成分14種類が検出され、うち3種類が世界アンチドーピング機構の禁止薬物リストに掲載されている成分だった。

 北朝鮮側は「W杯直前に雷に打たれた選手の治療に鹿の角の成分が入った漢方薬を処方し、そこに違反成分が含まれていた」と弁明していた。日本協会の小倉会長は「FIFAの人間と話した時、『北朝鮮は調査に協力的で、漢方薬も提出している。(その姿勢には)共感できる』と言っていた」と明かしていたが、規律委員会で情状酌量を認められることはなかった。

 処分された5選手はW杯の守備の主力。9月の五輪予選にチームとしては出場するが、大幅な戦力ダウンになる。5人の中でもDFリ・ウンヒャンは08年U-20W杯で2得点、DFホ・ウンビョルは08年U-17W杯はMFとして2得点を奪うなど攻守の能力も高かった。今回のW杯でもスウェーデンに0-1で敗れたが、ボール支配率で上回るなど、五輪予選では日本にとって難敵とみられていた。

 五輪予選で日本は過密日程で最も疲労が蓄積した4戦目に対戦する。難敵の守備の戦力ダウンは「朗報」ともいえるが、佐々木監督や選手たちは逆に気を引き締めた。佐々木監督は「こういうことがあると、逆に新しい選手が奮起するということはよくある。北朝鮮はクローンみたいな選手がどんどん出てくる。16歳でドリブルのうまい選手もいる。次のW杯に出られないということは、ロンドン五輪にかける思いがより大きくなるので警戒しないと」と引き締めた。

 今回の情報は監督やスタッフから選手に説明はなかった。選手らはそれぞれネットなどで情報を収集したという。MF大野は「絶対油断してはいけない。北朝鮮はエースがいなくても、すごいプレーをしてくる」。FW丸山は「ハングリーで精神力はアジアで一番強い。北朝鮮とやるまでに(五輪出場を)決めるのが一番」と話した。

 佐々木監督就任後の08年以降、北朝鮮には4戦負けなしだが、今合宿前にMF沢は「私は北朝鮮が一番戦いにくい。何より気持ちが強い」と話していた。突然の「追い風」情報にも、なでしこジャパンの士気が緩むことはない。【菅家大輔、鎌田直秀】