<ロシアリーグ:ルビン2-1CSKAモスクワ>◇18日◇ヒムキ

 【モスクワ(ロシア)=今村健人】CSKAモスクワの日本代表MF本田圭佑(25)が82日ぶりに、復活のピッチに立った。ロシアリーグの優勝決定プレーオフリーグ・ルビン戦で、右サイドで先発出場を果たした。前半29分には、自らのドリブル突破で得た正面25メートルのFKでゴールを狙ったが、惜しくも左に外れた。それでも、8月28日のスパルタク・モスクワ戦の右膝負傷から約3カ月。復活への確かな1歩。15日のW杯3次予選アウェー戦の北朝鮮戦で0-1で敗れ、ザッケローニ監督17戦目で初黒星となった日本代表にとっても、大黒柱の復帰は朗報となった。

 白い息を、何度も吐き出した。前夜、モスクワ市内には今年初めて、雪が積もった。この日の試合開始は夜8時15分。身も凍る寒さの中、本田は82日ぶりのピッチの感触を確かめるように、それでもまったく力をセーブせず、ただガムシャラに走り続けた。

 最初のタッチは開始3分。パスを受けると迷わず前を向き、縦パスを狙う。トラップのタッチ、反転の動き、まったく右足の影響は見えない。15分には右CKキッカーも担った。その直後に相手のカウンターを浴び先制を許すと、すぐドゥンビアの元へ駆け寄り声を掛けた。

 前半、最高の見せ場は29分、自らのドリブル突破で得た正面25メートルのFKだった。呼吸を整え、右足で踏ん張り、左足を振り切った。壁を越えたボールは本田らしいブレ球の軌道を描く。力強い弾道も故障前とまったく同じ。だが、わずかにゴール左にそれた。思わず天を仰いだ。

 右膝半月板を負傷した8月28日のスパルタク・モスクワ戦も、ここルジニキスタジアムの人工芝だった。「踏ん張って、人工芝でやってしまった」と負傷直後、原強化委員長にもらした。その因縁の場所と、寒さも加わった過酷な復帰戦。それでも、前線の選手にケガ人が続出し、ブラジル人FWのラブも出場停止の中で、今持てる力を出した。

 大ケガと無縁だった男にとって、この3カ月はサッカー人生で初めて味わう時間だった。初めて膝をケガし、どの程度まで回復するか見えない道。それを、屈強な精神力で乗り越えてきた。

 膝の権威がいるスペイン・バルセロナで内視鏡手術を受けると、そのままリハビリに入った。ケガしたことを「チャンス」とまで言い切り、長期的視野に立って肉体改造に挑んだ。「ケガしたことが成功だった。ケガしたことで世界一に近づいたと思っている」。信念を復帰への推進力にしてきた。

 39分には、左からのクロスにゴール前で右足で力強く踏み切り、相手DFに競り勝ちながら強烈なヘディングシュートを打った。ゴール右にそれたが、右足をかばうような中途半端な動きはまったく見えない。前半を1-1で終えた。

 日本代表のザッケローニ監督が早期招集の道を探るなど、1日も早い復帰が待たれたエース。22日には欧州CL1次リーグのリール戦も控える。復活への第1歩を踏んだ。