元イングランド代表主将で昨年12月に米MLSギャラクシーを退団したMFデービッド・ベッカム(37)が、フランス1部パリサンジェルマンと異例の契約を結んだ。契約期間は今季終了までだが、約5カ月の給料は全額、パリの慈善団体に寄付することを明かした。英メディアによると金額は400万ポンド(約5億8400万円)。前代未聞の条件を掲げ、スーパースターが花の都に降り立つ。

 「32番」のユニホームを手に取り、ベッカムはほほ笑んでいた。移籍期限ぎりぎりに決まった自身6つ目のクラブ。選んだのはパリの地だった。記者会見場には英仏両国の報道陣が詰めかけ、英テレビ局は生中継で報じた。契約は今季終了まで5カ月間。その中で、驚きの条件を明かした。

 「お金には全く興味がないので、給料を受け取らない。パリの子どもたちへ寄付することにしたんだ。交渉当初から話し合っていた。そういう立場にいることを幸運に思うよ」。地元の慈善団体に全額寄付する前代未聞の契約。英メディアによると、寄付額は400万ポンドに上るという。スターにしかできない決断だった。

 37歳。だが「21歳のころのようにプレーできるよ」と笑った。その証拠か、数多くのオファーを受けた。「今までにないくらい一番多かった。とても光栄だった」。プレミアリーグからも話はあったが「イングランドでは(古巣の)マンチェスターU以外ではプレーしたくなかった」と断った。ACミラン時代の指揮官、アンチェロッティ監督の下で戦うことを選んだ。

 「パリサンジェルマンはこれから10~20年の間に大きな成功を収めるクラブ。自分はその未来の一部だと思っている。契約期間は短いけど、その後も成長を手助けできれば」。チームはカタールの王族がオーナーとなり、強化を続ける。そこに魅力を感じた。得点王のFWイブラヒモビッチらと夢のラインも広がる。

 「これが最後かなんて分からない。ずっと言われてきても、サインし続けてきたから。できるだけプレーしていたい。僕の情熱はフットボールだから」。ビクトリア夫人と子どもたちは学校のため、ロンドンで暮らす。単身のパリで、ベッカムはまだ輝き続ける。