【ミラノ(イタリア)4日=西村明美通信員】日本代表のMF本田圭佑(27=CSKAモスクワ)が、セリエAの名門ACミランとの移籍交渉が合意したと、現地イタリア紙が一斉に報じた。ガゼッタ・デロ・スポルトはこの日付の1面で大々的に報道。ただし、今年12月まで契約を残しているCSKA側とは、クラブ間合意には達していないという。移籍時期も今夏になるか、移籍金がなくなる来年1月になるかは未定だと伝えた。

 イタリア各紙が、本田一色になった。ガゼッタ紙は日本代表のユニホームを着た本田の写真を1面で大きく掲載し「本田ミランへ。選手と合意」と断定的に報道。コリエレ・デロ・スポルトなど主要各紙も一斉に「ミランと合意」と伝えた。カルチョ(サッカー)の国で、日本選手の移籍をこれほど大きく扱うのは異例だ。

 ガゼッタ紙では「年俸250万ユーロ(約3億2500万円)の4年契約を交わしたようだ。(ACミランの)ガッリアーニ会長、本田側の代理人、仲介人のエルネスト・ブロンツェッティ氏の間で簡単に合意に持ち込んだ」と記した。ただし、同紙は「ミランが(放出する)選手を売っていないため(8月25日開幕の)シーズン最初から本田がミランのユニホームを着られるか、(来年)1月になるかは分からない」と、入団時期については現時点では不明だとした。

 コリエレ紙は「ミランは、CSKA側に移籍金200万ユーロ(約2億6000万円)の振り込みを準備」としたが、トゥット紙は「ミランには出せる金銭が1リラもない」と移籍金なしでの獲得を目指すという。今夏の移籍を実現するには、今年12月まで契約を残しているCSKAと、ACミランとの間での移籍金などのクラブ間合意が必要。今冬だと移籍金は発生しない。

 仮にACミランと個人間での合意があったとしても不確定要素は多い。「本田獲得資金」を捻出するため、ACミランはFWロビーニョの売却を進めるが、移籍は決まっていない。本田に関しては、昨年1月には同じセリエAのラツィオと移籍交渉が進み、今回と同様に「個人間の合意」という報道が流れた。しかし、結局はクラブ間での移籍金で折り合いがつかずに破談になった経緯もある。

 一方で今回は、CSKAが本田の後釜にブルガリア人のMFゲオルギ・ミラノフ(21)の獲得を決め、移籍への環境が整いつつある。日本代表で出場した6月のコンフェデレーションズ杯で、本田がイタリアからPKとはいえ得点を記録。イタリア人のザッケローニ監督が、かつてACミランを率いた縁もある。

 1年前に香川がマンチェスターUへの移籍が決まった時、本田は「俺もビッグクラブにふさわしい」と言った。今後はCSKAで臨む13日のロシアスーパー杯に出場予定だが、その後は移籍交渉次第。エバートンなど他クラブも興味を示す中、念願のビッグクラブ入りか、時期は今夏か、それとも今冬か。欧州でも本田の去就が注目されている。

 ◆ACミランのトップ下事情

 昨季、攻撃的MFはボアテングが務め29試合に出場し2得点を挙げたが、サポーターからの人種差別行為によりシーズン途中から国外への移籍を希望。攻撃的なポジションの人材難から冬の移籍で獲得したFWバロテリがトップ下を務めていた。さらに今夏最大のターゲットだったマンチェスターCのアルゼンチン代表FWテベスをユベントスに奪われ、本田獲得への意識が加速したと伝えられている。

 ◆ACミラン

 1899年、ミラノで創設。86年に後に首相となるベルルスコーニ氏が買収、翌年にファンバステンらを獲得、黄金期をつくる。98年から日本代表ザッケローニ監督も指揮官を務めてリーグ優勝。06年にはいわゆる「八百長騒動」で処分を受けるも、翌シーズンには欧州チャンピオンズリーグ(CL)優勝。昨季はリーグ戦3位。DFマルディーニら多くのイタリア代表選手を輩出。過去のリーグ優勝18回、欧州CL優勝7回。ユニホームは赤と黒の縦じまで「ロッソ・ネロ」と呼ばれる。本拠地はサンシーロ。