【ミラノ(イタリア)10日=八反誠、波平千種通信員】ACミランの日本代表MF本田圭佑(27)がミラノ郊外の練習場ミラネッロで初めてサポーターにサインし、記念撮影に応じた。それも、サポーターを敷地内に招き入れる異例のスタイル。「ミラン本田」は初めて本場カルチョの国で背番号10の入ったサインを披露した。初合流から2日連続素通りで熱心なサポーターからは不満の声も、ここでも本田らしさを見せた。

 

 突然のことで、誰も何が起きたのか分からなかった。完全非公開の練習が行われていたミラネッロから、バロテリの赤いフェラーリが出てきた。練習が終わり選手が帰りはじめた。クラブが用意した本田を乗せる高級車アウディも敷地内で動きだした。いつ出てくるのか?

 待ち構える報道陣が警戒のレベルを1段階上げると、突然、広報から指示を受けた警備員が正門前のサポーターを立ち入り禁止の敷地内に誘導した。

 「サポーターだけだ。報道陣は駄目だ」-。この日は寒く、サポーターも少なかった。ゾロゾロと5、6人がクラブハウスへ。約10分後、明るい表情のサポーターが列になって“宝物”を抱えて出てきた。「K

 HONDA」を崩したような字体のサインの右下には、ミランで要求し勝ち取った重い重い背番号「10」が書き込んであった。

 立ち入り禁止の室内ではサングラス姿の本田がサプライズ登場。求めに応じサインし、写真にも納まったという。鮮やかなブルーのシャツに、チェックのグレースーツでビシッと決めていた。幸運に恵まれたイタリア人の若者2人は「とてもインテリジェンスにあふれ、態度にも好感が持てたよ」と納得顔だった。

 ミランではカカもデ・ヨングもみな、門の外に出て車を止めてサインをする。ただ、連日本田目当てに日本とイタリアの報道陣が待ち構えている。1度車を止めたら混乱は必至。そんな状況下でクラブ広報の意向もあって、異例の対応を取り、サポーターを招き入れるという形で初めてサインした。名門でも臆することなく、自分のやり方で、できる範囲でファンの要望にも応える。実に本田らしい、本田にしかできないやり方だった。

 合流から2日間は車の後部座席に乗って素通りし、サポーターから不満の声が上がっていたが、3日目にして見せた本田の対応によって、批判の火種は大きくなりそうもない。批判も誤解も恐れない男だけに、過去2日の対応が関係したわけではない。ただ、サポーターを軽視したことはない。合流3日目、熱狂的でうるさいサポーターに対する、ミラン本田流の“初仕事”はスマートでスピーディーだった。