2010年W杯南アフリカ大会決勝で主審を務めたイングランドのハワード・ウェブ氏(43)が引退を表明し、25年の審判員生活に幕を閉じた。10年の欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝でも笛を吹き、プレミアリーグなど500試合以上を担当。「数多くの大舞台に参加できて幸運だった」と感慨をにじませた。

 父も地域リーグの主審だったウェブ氏はもともと警察官だったが、後に国際審判員となった。08年の欧州選手権で疑惑の判定をめぐり物議を醸し、その舞台裏に迫ったドキュメンタリーの主人公にもなった。「過去に想像を絶する重圧もあったが、経験で得た知識を伝えることが重要」との信念は揺るがない。

 集大成のW杯ブラジル大会では決勝トーナメント1回戦ブラジル-チリ戦などを裁いた。英メディアは最悪の試合として多くのイエローカードが乱れ飛んだスペイン-オランダ戦の10年W杯決勝などを挙げたが、威厳を感じさせる存在感は最後まで変わらなかった。

 今後はプロ審判員協会のテクニカルディレクターに就任する。ゴールラインテクノロジー(GLT)が導入されて判定の助けになる一方、スロー映像で厳しい目が向けられる。「人生の新たな章に入っても共通の目標がある。次世代の審判員の技術革新に努めたい」と意気込んだ。