オッギーのOh!Olympic
荻島弘一編集委員が日々の話題、トピックスを取り上げる社会派コラム。これまでの取 材経験を絡め、批評や感じたことを鋭く切り込む。

◆荻島弘一(おぎしま・ひろかず)1960年(昭35)9月22日、東京都生まれ。84年に入社し、整理部を経てスポーツ部。五輪、サッカー などを取材し、96年からデスクとなる。出版社編集長を経て、05年に編集委員として現場の取材に戻る。
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低速リンク&ゆるい氷に完敗した日本

 期待されたスピードスケート男子短距離陣がメダルを逃した。「勝てる準備はしてきた」と話していた加藤条治が5位、「自信しかない」と言い切っていた長島圭一郎が6位。ともに1回目で好位置につけたが、オランダ勢に完敗した。

 オランダの強さと、日本勢の弱さ。背景には、リンクの特性もあったように思う。もともと、海抜0メートルに近く「低速リンク」とされた。さらに、氷の重さ。会場内の気温が高めで、氷がゆるい(溶け始めている状態)と言われた。固くしまった氷は滑りやすく、スピードも出る。しかし、ゆるいとスケート靴のエッジが沈み、滑るのに力が必要になる。より、パワータイプの選手に有利になる。

 タイム的には決して低いレベルではなかったが、他の種目でも滑走後の選手の疲れ方が激しかった。「パワー不足の日本に不利」という予想通りになった。オランダの選手は強かった。「速い」というよりも「強い」。恵まれた体格から力強く氷をとらえていた。

 もともと長距離種目に強い「スケート王国」。運河が氷る冬季、移動手段はスケートになる。M・ムルダーは「オランダ人は、スケートと一緒に成長する」と話した。日刊スポーツのエリーヌ通信員は「オランダ人にとってのスケートは、自転車と同じ。スケートと自転車はみんなが持っている」と、背景を説明した。

 近年は短距離強化にも力を入れていた。4年前に02年ソルトレークシティー輪男子1000メートル金メダルのファンフェルデ氏が代表コーチに就き、スプリント練習を徹底した。夏場にはインラインスケートにも取り組み、M・ムルダーは12年世界選手権500メートルで優勝もした。パワーに技術が追いついてきていた。

 オランダに比べ、日本は弱かった。高速でカーブに入る500メートルは技術に頼る部分は大きく、小回りの効く日本選手は有利だった。大型選手はカーブでバランスを崩したり、コースを飛び出したりしたからだ。しかし、オランダ勢などの技術が進歩すると、日本のアドバンテージは消えた。

 後半の失速も気になる。清水が500メートルで優勝した98年長野五輪は、1回目の翌日に2回目が行われた。しかし、今は続けて行われる。500+500。1000メートルの体力が必要。500メートルに特化して強化をしてきた加藤と長島が、2回目の終盤で伸びなかったのは当然の結果だった。

 「世界最高のコーナリング」「世界一美しいフォーム」は、採点競技でもないスピードスケートでは意味がない。条件のいいリンクで練習するだけではなく、悪条件の屋外リンクで滑り込むなど本物の力をつける練習も必要だろう。結果を見れば、調整もうまくいっていたとは思えない。

 1月中旬、世界スプリントの行われた長野で、優勝したM・ムルダーは「自分の滑りができた。ソチへ状態は良い」と胸を張った。長島は「感覚がよくない。焦らず、焦りながらやりたい」と首をひねった。3週間後、注目された「日本のお家芸」は、心配された通りの結果となった。




日本のメダル数

金メダル
1
銀メダル
4
銅メダル
3

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