[ 2014年2月15日9時44分 ]金メダルに輝いた羽生は笑顔で日の丸を広げる(撮影・井上学)<ソチ五輪:フィギュアスケート>◇14日◇男子フリー

 19歳は、苦笑いを浮かべて頂点に立った。フィギュアスケート男子で日本人初の金メダルを獲得した羽生結弦選手(19)は、最高の結果に「ちょっと悔しい」。歴史的な快挙を喜びながらもミスが目立った演技への不満を率直にこぼした。

 フリーの曲は「ロミオとジュリエット」。100点を超える世界最高得点をたたき出した前日のショートプログラム(SP)とは打って変わり、緊張からか、動きが硬かった。最初の4回転ジャンプでまさかの転倒。2度目は成功させたが、その後も3回転ジャンプを失敗した。

 観客席には「東北は君を支えている」などと書かれた日の丸が掲げられ、仙台出身の羽生選手に「頑張れ」と声援が飛んだ。

 後半は持ち直したものの、演技終了後はリンクにうずくまったまま。肩で息をしながら立ち上がると、吹っ切れたような笑みを浮かべ、観客に向かって何度もお辞儀をした。

 スクリーンに表示された得点をしばらくじっと見詰め、がっくりとうなだれた。「金メダルは駄目かな」との思いが頭をよぎったという。だが次に登場したSP2位のパトリック・チャン選手(カナダ)も得点が伸びず、驚きの表情に。「すごくうれしい半面、悔しいかなというのもある。金メダルを取って言うのもなんですけど」。恥ずかしそうに笑顔を見せた。

 フラワーセレモニーで表彰台の真ん中に立ち、日の丸を肩に掛けてリンクを1周すると、最前列の観客から「おめでとう」と声が掛かった。川崎市高津区の会社員土岐彩香さん(36)は「羽生君の優勝を見届けられて良かった」と感激した様子だった。