[ 2014年2月6日8時28分

 紙面から ]浅田は、ソチ出発前の囲み取材で力強く真っすぐ前を見つめ意気込みを口にする

 金メダル確実の作戦を選び、集大成の五輪を飾る。ソチ五輪で金メダルを狙うフィギュアスケート女子の浅田真央(23=中京大)が5日、成田空港からソチに向けて出発した。フリーで2回跳ぶ予定にしていたトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を1回にし、ショートプログラム(SP)を含めて計2回にすると明かした。成功すれば五輪で女子初の快挙となる6種類の3回転ジャンプの構成で悲願に挑む。

 外は雪の名残でいてついた。しかし、出発ロビーは、日本選手団の最大のヒロインを約50人の報道陣が取り囲み、熱がこもった。その中で浅田が熱い決意を明かした。「今回はSP1回、フリー1回で行くと決めました」。五輪では計3度の3回転半を跳ぶと予想されていたが「1回の方がプログラムのバランスもいいし、得点もそんなに変わらない」と、すっきりした表情で前を見据えた。

 昨年12月末の全日本選手権後、大きく気持ちが変化したようだ。計3度の3回転半に挑んだ全日本直後は、五輪のフリーで3回転半を2度入れる構成にするかについて「五輪本番の前の調子で跳ぶかどうか決める」と話していた。それが、「バンクーバー(五輪)でアクセル(合計)3回という目標は達成しました」と気持ちが切り替わった。心残りは「ない」と言った。

 3回転半を1回にすることでフリーの演技構成は、実は3回転半を2度跳ぶより基礎点が3・28点高くなる。成功し加点がつけば、より金メダルに近づく。加えて「バンクーバーで跳べなかった全種類の3回転ジャンプを入れたい」と、ルッツやフリップなど6種類の3回転挑戦に意欲を見せた。成功すれば五輪で女子初の快挙となる構成だ。3回転以上のジャンプが8回、通称「エイト(8)・トリプル」もこれまで成功者はいない。基礎点10・4点と、最大の得点源となる連続3回転ジャンプも「練習で好調」と組み込む予定だ。

 小学生のころから取り組む3回転半は浅田の代名詞だ。大会で優勝しても3回転半が成功しないと「気持ちがしっくり来ない」と話すほどだった。10年9月に佐藤信夫コーチが就任、ジャンプを基礎から見直した時も、3回転半だけは無理に跳んだ。「あの頑固さには脱帽」(佐藤コーチ)というほど固執した。

 その思いを封印して、金メダルにこだわる演技構成にする。「自分の考えも少しずつ変わってきたんです。やることはすべてやってきた」「いよいよだなという気持ち。いいイメージを持って臨みたい」。その言葉が、大人への成長と悲願の金メダルを予感させた。【吉松忠弘】

 ▼浅田の構成比較

 五輪で予定する演技では昨年10月のジャパンオープンとスケートアメリカ、11月のNHK杯の3試合で挑戦した2つのジャンプをあらためて跳ぶことになる。3回転フリップ-3回転ループは、すべて3回転-2回転となっており、成功は09年世界選手権までさかのぼる。ルッツは跳ぶエッジ間違いが3試合とも続いた。3回転半は今季の出場5試合で11度挑戦して成功なし。ジャパンオープンから11月のNHK杯までの3試合はフリーは1本の構成で、両足着氷、転倒、回転不足。12月のGPファイナルから2本入れる構成に変更し、転倒と回転不足と失敗。全日本選手権でも回転不足と1回転半に終わった。