[ 2014年2月14日9時29分

 紙面から ]

 五輪連覇に挑む女子フィギュアスケートの金妍児(23=韓国)が警戒を強めた。12日(日本時間13日)にソチに到着。団体金メダルの立役者となったユリア・リプニツカヤ(15=ロシア)が優勝候補扱いされていることに「リプニツカヤが優勝するというような雰囲気があることはよくない。私も人間ですので」ときっぱりと口にした。浅田真央(23=中京大)とのラストバトルに15歳のヒロインが参戦。19日(同20日未明)から始まる女子シングルの戦いが一層熱を帯びてきた。

 金が警戒心をにじませた。韓国を中心に約100人の報道陣、20台以上のカメラが集結したソチの空港。深夜にそぐわない異様なムードの中「リプニツカヤが優勝候補に挙がっているが」と聞かれた時だった。

 金

 まだ試合はしていないし練習もしていない。大会前には金メダルが誰、銀メダルが誰と(いう予想)はいつもなので別に構わない。ただリプニツカヤが優勝するというような雰囲気があるのはよくない。私も人間ですので。

 ジュニア時代からのライバル浅田との最終決戦に15歳の天才少女が割って入ってきた。新種目の団体金メダルに導いたヒロインは連日大きく報道され、個人戦との2冠達成というムードが増しつつある。そんな追い風に対して、到着直後からくぎを刺した。

 リプニツカヤの団体女子SPとフリーの合計点は、自己ベストを更新する214・41点(参考記録)。フリーでは柔軟性を生かした「キャンドルスピン」で今季最高を上回る得点をたたき出した。今大会ではロシア勢が高得点を出し、12日のペアでは金と銀を獲得した。地元の大声援をバックに快進撃が続く。

 金は自分に言い聞かせるように続けた。

 金

 ロシア選手の後で演技するのは(観衆の)声が大きいので気にはなります。フィギュアスケートはスピードスケートのように、記録で競うものとは違う。試合によってジャッジは変わる。選手はそれを受け止めて、それも試合のうちだと思う。私ができることをすることが大事。自分にとって最後の試合なので、そういうこと(開催国ロシアへの追い風)にかまわず、自分の試合をしたい。

 本番への仕上がりには手応えを示した。女子SP(19日)の1週間前に決戦の地に入った。「他の大会に比べて早くソチに来た。バンクーバーでも早く入った」と、金メダルパターンを踏襲。さらに「日本とかイタリアの選手じゃなくてよかったと思った。試合をしていいこともあるが、体力が問題になるかも。試合は選手にとってストレスが多いので出ないほうがよかった」と、団体戦がなく個人戦に集中できるメリットも強調した。

 ソチ五輪が現役最後の演技になる。「最後の試合と思うと集中できないかも、と思って、ただの試合と思って練習してきた。試合もそうしたい。結果はどうなるか、わからないが、準備は完璧にしてきた」。警戒心や不安を交えつつ、最後は五輪女王として自信を漂わせた。【益田一弘】

 ◆フィギュアのロシア勢の快進撃

 前回バンクーバー五輪では50年ぶりに金メダルなしに終わった。今回、団体(6、8、9日)では、観客が足を踏みならすなど熱狂的な応援の中、31歳の「皇帝」プルシェンコ、15歳の新星リプニツカヤらが活躍し、ロシアに最初の金メダルをもたらした。ペア(11、12日)ではボロソジャル、トランコフ組(ロシア)が開催国2つ目の金メダル。ストルボワ、クリモフ組が銀を獲得してワンツーフィニッシュ。伝統種目の復権を印象づけた。