[ 2014年2月24日11時17分

 紙面から ]エキシビションで華麗な演技をする羽生(撮影・井上学)

 ソチ五輪フィギュアスケート金メダリストの羽生結弦(19=ANA)が大いなる野望を口にした。22日、「アイスベルク・パレス」を会場にしたエキシビションに参加。今後の目標として、いまは2種類の4回転ジャンプを、5種類まで増やすことを掲げた。欧米人以外で初の五輪王者となった羽生は、自ら「史上初」好きを公言しており、フィギュア界の新たな歴史に挑む。フリー演技が世界的に感動を呼んだ女子6位の浅田真央(23)らも出演した。

 若き王者の情熱は天井知らずだ。日本男子初、欧米人以外初など、「初」ずくめのメダルを手にしながら、まだまだ貪欲に「初」がほしい。「初めてやるとか、そういう史上初とか大好きなんで」。さらりと言った目標は4回転ジャンプ。今はトーループとサルコーをプログラムに入れているが、「たぶん5種類まではなんとかなるかな」とニコリと笑った。

 現在のフィギュア界では、試合での成功例は2種類が最高で、羽生もその1人。体力、精神ともに消耗が激しく、数を増やすより完成度を上げる段階にある。だが、4回転を回避したライサチェク(米国)が優勝した10年バンクーバー五輪から4年。その間の男子の進化は著しく、ソチではフリーを滑った24人中17人が4回転を構成に入れ、うち3人が2種類を組み込んだ。18年平昌(ピョンチャン)までの4年で、また想像を超える進化が起こる可能性もある。

 羽生の野望は無謀ではない。自信がある。「ループは片足でステップアウトまではいきましたし、ルッツは回りますし、アクセルもある程度は回って、技術的には回転不足でこけるくらい」。オフシーズンにすでに練習済みという。ループ、アクセルの成功者はまだいない。自信が現実になれば、さらに「初」の称号が手にできる。ちなみに、フリップは「跳べてもプログラムに入れないから重要視していない」という。

 どんどん精度を上げていくのは、またオフになってからで、まずは来月26日に日本で開幕する世界選手権(さいたまスーパーアリーナ)に照準を合わせる。世界選手権では12年に銅メダルを獲得しているが「ものすごく大事な試合。金メダルがない試合」と“連勝”に挑む。23日には閉会式に参加するが、「世界選手権も大事。羽目を外さない程度に楽しみたい」と気持ちを引き締めた。

 エキシビションでは東日本大震災からの復興を願ったプログラム「白鳥の湖」を披露。「演技で直接的にはないが、間接的にでも思い出すきっかけになってくれれば。金メダルからスタートしなくては」と思いを明かした。それは競技でも同じ。ここから、4回転時代の新たな地平を開いていく。【阿部健吾】

 ◆4回転ジャンプ

 全6種類のうち国際スケート連盟(ISU)の承認条件を満たした大会での成功は3種類。トーループは88年世界選手権のブラウニング(米国)、サルコーは98年ジュニアGPファイナルのゲーブル(米国)、ルッツは11年コロラドスプリングズ選手権のムロズ(米国)が初の成功者。女子での成功者は02年ジュニアGPファイナルでサルコーを決めた安藤美姫のみ。