[ 2014年2月26日8時21分

 紙面から ]ソチから帰国した浅田は日本外国特派員協会での会見で考えながらも笑顔を見せる

 日本中を感動の渦に巻き込んだソチ五輪女子フィギュアスケート6位入賞の浅田真央(23=中京大)が25日、森喜朗元首相の失言に、軽やかに反撃した。ソチ五輪から成田空港に帰国後、日本外国特派員協会(有楽町)で会見に臨み、「森さんも後悔していると思う」とにんまり。進退についても得意の真央語で「ハーフ、ハーフ」と、揺れる心をうかがわせた。

 23歳の乙女心が大きく揺れる。普段のフィギュア会場とは違い、外国報道陣のストレートな問いかけに、目を白黒させた。時には苦笑い。時には真剣に、時にはジョークも交えた。そして、自分の気持ちを「(五輪は)悔いなく終わったと思う」と、正直に打ち明けた。

 肩の荷を下ろしたのか、終始、笑いが絶えなかった。会場が最もわいたのは、森喜朗東京五輪組織委員会会長の「あの子、大事な時に必ず転ぶ」失言に対する感想を求められた時だ。最初のその質問には「終わったことなんで何とも思っていない」と、判で押したような優等生発言で、するっと逃げた。

 しかし、そこは外国特派員協会。記者にはスポーツよりも時事畑が多く、大物政治家の失言には敏感だ。まして、目の前にいる愛らしい女性を攻撃したとあれば、ほっとくわけにはいかない。かたきを取ってやろうと、最後の最後で、また同じ質問が出た。

 浅田も意を決する。まず「人間なので失敗することもあります」と軽くけん制のジャブ。続いて「失敗したくてしているわけではないので、それは違うと思う」ときっぱり。その後が気が利いていた。「ああいう発言をして、森さんも少し後悔しているんじゃないかと少し思います」と、場を和ませるかのように、やんわりと反撃。すると、会場は拍手喝采に包まれた。

 最も核心の質問もちゅうちょなく飛び出した。「来シーズン、続けていく可能性は何%ぐらいありますか?」。あまりの直球に、最初は「もう1大会、世界選手権が残っているので、そこで最高の滑りをして、その後にじっくりと考えたい」と、またまたやんわりと優等生。

 いつもなら、これで次の質問だ。しかし、この日は、味方と思っていた横の司会者から「パーセントの質問は返事をしていただいてないんですけど」と、鋭い突っ込みが入った。笑いながら天を仰ぐ浅田。「パーセントで言うと…」と、短く首をかしげると、出した答えが「50パー…、今のところハーフ、ハーフぐらいです」だった。

 会見後は、新幹線で名古屋の自宅に帰宅。ようやく、心を落ち着けた。家に帰るまでがソチ五輪だとすれば、浅田の五輪は、この日、ようやく幕を下ろした。「強い意志を持ってあきらめなければ、自分の目指しているものができるんだなと強く感じた。それが自分の人生にも生きてくるんだと感じている」。それが、浅田がソチから持ち帰った最大のメッセージだった。【吉松忠弘】

 ◆森会長の発言

 20日、福岡市で行われた講演で「頑張ってくれと見ていましたけど(浅田)真央ちゃん、(SPで)見事にひっくり返りました。あの子、大事なときには必ず転ぶんですね。負けると分かっている団体戦に、浅田さんを出して恥をかかせることはなかった」などと話した。