[ 2014年2月21日21時8分 ]予選2回目も転倒し、涙を流す三星(共同)

 ママさん選手として出場した三星マナミ(30=野沢温泉スキーク)は、笑って、泣いた。

 予選1本目は、エアの着地で転倒して15・60点。2本目も、2つめのエアの着地で転倒。ボトムまで滑り落ちて頭を抱えた。

 最初で最後と決めて、臨んだ五輪。転倒した時点で、決勝進出の道は絶たれた。通常なら、そこで諦めてただボトムを滑り降りてくる選手がほとんど。しかし三星は、立ち上がると再び壁に向かって滑り出した。スピードに乗ると、ずっと取り組んできた高難度のフレア(後方1回宙返り)を美しく決めた。会場からわき上がる拍手。最後に飛んだエアの着地でまた転倒し、そのままゴールラインを割った。それでもゴーグルを外すと、口元は笑顔で、目は涙で潤んだ。「自分のできることに全力を尽くせたと思います。自分が攻めた結果。それを受け止めたい」。

 スタートで隣にいたのは、夫でありコーチの上野雄大さん。観客席では、娘のすみれちゃんが「ママ頑張って」と応援してくれた。「五輪は最高の舞台。楽しいと思えるのは、自分を支えてくれる家族や仲間が、一生懸命やらせてくれたから。その時間の中で自分はベストを尽くせたから、思いっきり楽しめた」と話した。

 結婚、出産を経て、現役復帰した。遠征のため約4カ月間、すみれちゃんと離れることもあった。「今まで、一生懸命のすばらしさを伝えたくてやってきた。でも五輪では、一生懸命の先にある楽しさを感じてほしい」と試合に臨んだ。だから諦めず、転んでも立ち上がってエアを決めた。その姿を、娘に見てほしかった。「できないで終わりたくなかった。絶対にあきらめたくなかった。どう転んでも、絶対に最後まであきらめないですべるときめていた」。これからはママさんアスリートではなく“ママ”として家族と過ごしていくつもりだ。