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お酒特集2007


伝統の「甑(こしき)」で最高のお酒造りを!/頚城酒造

甑(こしき)を使って米を蒸す
米蒸しには伝統的な「甑(こしき)」を使っている

 2007年11月4日。本年の仕込み初日を迎えた。蔵人にとって、本格的な酒造りが始まる仕込み初日は特別なもの。頚城酒造では、11月からの4カ月間、厳冬期のみの仕込み「寒造り」という伝統を守っている。杜氏の山田晃氏を始め、5人の蔵人がこの日より仕込みを開始した。

 昭和11年創業当時から使用している蔵に足を踏み入れると、蒸し米のやわらかい香りに包まれた。そこでは伝統を感じさせる甑(こしき)を使った米の蒸し作業が行われていた。大量生産が求められる現代、酒造りの現場も大きく様変わりし、米蒸しには大きなボイラーなどを使うところもある。しかし大手酒造メーカーでも、大吟醸などの最高級酒を造るときには、いまでも甑(こしき)が用いられているという。八木康博社長は「いいお酒を造るならば、やっぱり甑(こしき)。ムラのない蒸し上がりを目指すには一番です」と話した。

 甑(こしき)で1時間ほど蒸した米は、36、7度の適温に放冷されて麹室へ。ここでは蒸し米に麹菌を種付けし、徐々に温度を上げながら最高42度の温度になるように、温度コントロールをして2日間ほど寝かせる。麹室は、室温30度、湿度45~50%の環境を保っている。これは、麹をベストな状態で発酵させる最適な条件なんだとか。「麹室は造り酒屋の心臓部。麹づくりがうまくいけば、酒造りは半分うまくいったと言ってもいいくらい大事なんです」と八木社長は言葉に力を込めた。麹室は日光杉を3~5年枯らしたもので作られている。「室の湿度が上がりすぎると、木が水分を吸ってくれるんですよ」(八木社長)。

管理の難しいチルド清酒をミニストップと共同開発

麹室の中の作業
麹室の中で、蒸し米に麹菌を種付けする山田杜氏(右)

 今回、紹介するのはミニストップと共同開発しているチルド清酒「久比岐」。一度も火入れをしていない本生酒というのは、温度変化で酒質が変化しやすい為、出荷から店頭に並ぶまで一定の温度を保つことが必要で、管理が難しい。頚城酒造としても、全国展開している小売業者との付き合いは初めて。しかも、管理の難しいチルド清酒の生産ということで、「大きなチャレンジだった」と八木社長の長男、専務の崇博氏は5年前の最初の取り組みを振り返る。契約栽培米を使用したチルド清酒の生産を決めた理由を八木専務は「酒造りは、生き物、自然が相手なんだということを、ミニストップの松川バイヤー(当時)は本当に理解してくれた。契約農家でお米を栽培するとなると、農作物だから不作の年もある。『それでもいいんでしょうか?』と聞いたら『そうだったら、それで仕方がないです。自然が相手なんですから』と。それがありがたかったんです」と話した。

 このチルド清酒「久比岐」は酒造好適米「八反錦」を使用している。もともとは広島で栽培されていたお米だが、八木社長が「八反錦」の味にほれ込み、地元の農家・片桐均氏に栽培を依頼。元来酒好きな片桐氏も難しい酒米作りと知った上で快諾し、「八反錦」を使用したお酒つくりが十数年前にスタートした。新潟県を代表する酒造好適米「五百万石」と比べると、「八反錦」は、酒作りには大切な米の心白が大きく、高精米しても割れず、吟醸造りに適しているのが特長的。さらに吸水もよく、やわらかい口当たりの酒に仕上がるという。

自然に逆らわず、当たり前のことをきっちりと

昭和11年創業の頚城酒造
昭和11年創業の頚城酒造

 頚城酒造の厳冬期限定での仕込みや、米、水、麹つくりに対する姿勢を目の当たりにすると、酒造りに対する並々ならぬこだわりが感じられる。八木社長は「自然に逆らわないことが大事。だから、仕込みは冬しかやらない。いいお米、いいお水、最適な気温、そしていい蔵人。これがすべてそろったときに、最高のお酒ができます」と話した。八木専務は「みなさんは“こだわり”と言ってくれるんですが、おいしいお酒を作るために我々にとっては当たり前のことなんですよ」と笑って言った。しかし、今の時代、その“当たり前”のことを当たり前にやることが難しい時代。だからこそ、頚城酒造のこだわりが際立つのだ。

チルド清酒「久比岐」
ミニストップと共同開発しているチルド清酒「久比岐」

 新潟中越沖地震で蔵も被害を受けた。創業以来の蔵の土壁は崩れ落ち、応急処置として今は発泡スチロールの板をはめ込んでいる状態。冷蔵庫の貯蔵タンクも20センチ以上横にずれたのだという。「中に入っているお酒を瓶詰めしてから、タンクの位置は直さないといけないですね」と八木専務。震災から早4カ月。まだ、爪あとははっきりと残っているが、酒造りの歩みを止めるわけにはいかない。「復興のためにも、今私たちが出来ること、おいしいお酒造りを一生懸命やるだけです」(八木専務)。

農家、酒蔵、販売業者の思いのたくさん詰まったミニストップ限定販売のチルド清酒「久比岐 純米吟醸生原酒」は、12月26日発売予定。ぜひ、こだわりのお酒を、思う存分味わってもらいたい。

酒造基本情報

所在地949-3216 新潟県上越市柿崎区柿崎5765

代表銘柄久比岐、越路乃紅梅、三階節

問い合わせTEL:025-536-3756



ミニストップ(株)の取り組み

ミニストップ阿部常務の体験
ミニストップの阿部常務(左)も「添」の仕込み作業を体験した。手前は橋爪バイヤー。

 ミニストップの日本酒造りは今年で5年目を迎えた。3年前からは「八反錦」の田植え、畑の草刈り、そして稲刈りを経て仕込みまでを担当者が酒蔵・農家と一緒に作業、お酒造りに参加している。

 今年の仕込み作業にはミニストップから阿部信行常務、菊地明デザート・飲料商品部長らが同行。頚城酒造の八木社長はじめ、農家の片桐さんたちとも交流を深めた。こうして、企業のトップが一緒に商品を作るという取り組みをしているのは、非常にめずらしい。「地元の人間が、地元の農家のものを使って、顔の見える作業をすることが大事」という八木専務の思いは、ミニストップの担当者も同じだった。だからこそ、実現したこの「チルド清酒 久比岐」なのだ。「自分たちがお客様に提供する商品を作っている人たちがどんな人なのか、どんな環境でつくられているのかを、しっかりと知り安全な商品を店頭に並べたい」と担当者。お客様を大切にする社風がこの言葉にも表れている。

 収穫などの詳細の様子はこちらから



記者も「添」の仕込み作業を体験!

酒造りを体験する矢島
生まれて初めての酒造り体験をする記者(手前)

 昔は酒蔵は女人禁制だったという。女性の化粧の香りが麹やもろみに移ってしまうことや、菌の管理が難しかったのでうまくいかなかった場合は「女性が蔵に入ったから」とされることがあったからだという。今では、女性の杜氏もいるくらいで、男女の区別はない。今回は、記者が仕込み作業に同行し、実際に「添」の仕込みを体験させてもらった。

 蔵に入ったとたんに感じるお米の匂い。「日本人でよかったぁ」と思う瞬間だ。麹をアルコール発酵させている途中の「酒母」を飲ませてもらった。アルコールは5%程度というが、さほど感じない。ヨーグルトのような感じで、ちょっと酸味が強い。甘酒のすっぱいもの、といったところか。この「酒母」も、お酒造りに欠かせない大切な要素なのだという。

 「添」の仕込みは、酒母に麹、水、蒸し米を混ぜていく作業だ。タンクの底からしっかり混ぜるので、お酒の香りがタンクの底から上がってくる。お酒に弱い人ならば、香りだけでも酔ってしまいそうだ。10分ほど体験したが、翌日、腕は若干の筋肉痛に…。

 今回、八木社長、専務、山田杜氏、片桐氏の人柄に触れ、話を聞くことができて、お酒造りは本当に大変だけどやりがいのある仕事なんだと感じることができた。そして今後は、これまで以上に味わってお酒を飲もうと心に誓うのでした。【矢島可奈子】


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