<爲末大学:アジア大会>

 アジアの範囲は広い。今回のアジア大会には中東のアラブ諸国、カザフスタン等の西アジア諸国も含んだ、45の国と地域が参加する。地域は日本からトルコのあたりまで東西の広範囲にわたる。ほかにもヨーロッパ選手権、アフリカ選手権などあるが、アジア大会ほど多様な大会はほかにはない。

 スポーツの競技力、主にメダル数はかなり国の発展に影響される。1970年代までアジアには途上国が多かったから、五輪でメダルを獲得することは随分と少なかった。スポーツの強化にはお金がかかり、それなりに豊かな国でなければメダルを獲得するようなレベルに引き上げることができないからだ。

 ところが1990年代あたりから、だんだんといくつかのアジアの国、主には中国の存在感が大きくなってきた。2004年のアテネ五輪では、ほぼ黒人選手しか決勝に残れない陸上男子の110メートル障害で劉翔が優勝、バスケットボールでNBA所属の姚明が活躍した。同じ頃、中国の経済発展がすさまじいというニュースも耳に入ってきた。

 今後50年は多くの先進国が高齢化を迎え、経済の伸びも鈍化するなかで、若く人口が多いアジアはスポーツでも経済でも発展するだろうと言われている。メダル数を決める要素はいくつかあるけれど、50%は人口(特に若い世代の人口)とGDP(国内総生産)だといわれていて、そのどちらもこれから先のアジアは伸びていく。まだスポーツの強化に取り組んでいる国も少ないけれど、インドなどこれから先、本気を出せば強豪国になる可能性を秘めた国がたくさんある。

 つい先日、ネパールに行って、ネパールオリンピック委員会の会長と会ってきたが、2020年の東京五輪をとても意識していた。1963年にネパールはオリンピック委員会が発足し、初めての五輪が翌1964年の東京だったそうだ。次の東京でネパールの五輪の旅は1つの区切りを迎えるから「ぜひそこでネパール初のメダルが欲しい」と話していた。

 最近の五輪ではメダルが随分と各国に分散している印象があるが、東京五輪ではかなりのメダルがアジアにもたらされているのではないだろうか。その頃メダルを獲得するような選手が、今回のアジア大会に出場している可能性は高い。

 これから6年後、東京でどんなドラマが待っているか。このアジア大会で少し、その未来が見えるかもしれない。(為末大)