決してメジャーな競技ではないが、情熱を傾ける道産子女性がいる。アジア版五輪とも言われる仁川アジア大会が19日、開幕する。セパタクロー女子は代表初選出の川又ゆうみ(25=上智大、札幌聖心女高出)が、バレエ仕込みの「180度開脚アタック」で金メダルを呼ぶ。

 女子セパタクロー代表の川又は足を頭上に振り上げ、ネット際のボールを強く相手コートに打ち込む「180度開脚アタック」を武器に、初のアジア大会に臨む。

 中学2年までお稽古ごとは、ピアノとバレエだった。「体を動かそう」と思った中3の時、留学生が持ち帰って校内に展示したセパタクローのボールと出会った。インターネットで競技を検索、札幌市内のチームに飛び込んだ。今も「他のスポーツは全くダメ」だが、この競技だけはバレエで鍛えた柔軟性が生きた。足を振り上げると、誰よりも高いボールをブロックでき、アタックも強かった。

 小学校の作文には「ピアノの先生になりたい」と書いたが、気がつけば苦手なはずのスポーツの日本代表。昨夏は本場タイの密林で2週間のセパタクロー修業を1人で行い「ただ蹴るだけじゃなく、しっかり足でボールを持ち上げて蹴れるようになった」と言う。アイドルフェースのアタッカーが、日本初の金メダル獲得の使者として、仁川に乗り込む。

 ◆川又ゆうみ(かわまた・ゆうみ)1989年(平元)7月23日、札幌市生まれ。2歳でピアノ、札幌屯田小2年でバレエを始める。札幌聖心女中3年でセパタクローと出会い、札幌聖心女高2年で全国大会初出場。上智短大から上智大の6年間は日体大のサークルで競技を継続。3年目の大学1年で全日本選手権3位、翌年は準優勝。10年秋から日本代表。162センチ、53キロ。家族は両親。

 ◆セパタクロー

 セパはマレー語で「蹴る」、タクローはタイ語で「ボール」。ネットを挟み、手を除いた体を使って相手コートにボールを返す。自陣でボールがコートに落ちたり、返せなかった場合は、相手の得点になる。9世紀ごろから東南アジアで行われてきた伝統競技で、60年半ばにルールが統一された。アジア大会では90年から男子、98年から女子が正式種目。