お粗末運営、競歩で誘導ミス/世界陸上

- 周回確認とメーンスタジアムへの誘導を行う係員ら(撮影・浅見桂子)
<世界陸上:男子50キロ競歩>◇8日目◇1日◇大阪・長居陸上競技場発着
地元開催の大会に水を差す、前代未聞の大失態が起きた。競歩の男子50キロで入賞(8位以内)争いしていた山崎勇喜(23=長谷川体育施設)が、競技役員の誘導ミスにより周回数を誤ってゴールしてしまい、途中棄権となった。競技運営側の連係ミスが原因で、経験や準備不足が影響したとみられる。入賞していれば北京五輪切符を手にしていただけに、山崎にすれば何ともやりきれない運営側の不手際。酷暑の約4時間にわたるサバイバル戦の末に待っていたのは、あまりに残酷な結末だった。
意識もうろうの中、最後の力を振り絞ってゴールした山崎に、悲劇が待っていた。競技場に入る直前の周回。「あと1周」と思ったところで、コース誘導員3人に競技場へ導かれた。何かおかしい…と察しつつ、指示に従いトラックを回りゴールした瞬間、倒れ込んだ。タイムが速すぎるため必死の形相で審判に「ゴールしましたよね」と確認すると、そのまま担架で医務室に運ばれた。電光掲示板に一瞬、表示された北京五輪内定を意味する「5位」は、幻と消えた。
世界に醜態をさらすミスだ。周回を数える係員と、道路を挟み反対側にいる記録係の連絡ミスにより、山崎の周回は47・5キロ地点で1周多く、カウントされていた。「(山崎は)終わりや」という指示に係員は、そのまま競技場へ誘導。直後、救護担当役員が間違いを伝え呼び戻すべく山崎を追いかけたが、その権限がなく、ためらううちに山崎は行ってしまったという。
この失態に、大会組織委員会の桜井競技運営本部長は会見で「運営上のミス。山崎選手、日本選手団に申し訳ないことをした」と謝罪。国際陸連のバイス事務局長が「桜井さんはハラキリなどする必要はありません」とフォローする一幕もあったが、人為的ミスは否めない。今大会は大阪陸協を中心にした役員が競技運営を担うが、シミュレーション不足は明らか。リハーサルとして5月6日に長居で日本選手権を開催したが距離は20キロ。長丁場でトラブルが懸念され、運営が倍以上に忙しくなる50キロは行われなかった。
さらに道幅3メートルのコースには選手から不満が出ていた。大会2日目の男子20キロでも誘導ミスがあり、また1度は失格になったフェルナンデス(スペイン)の抗議が認められ銀メダルを獲得した。ずさんな運営ミスが世紀の大失態を生んだのは明らかだ。
医務室で無念の結果を聞いた山崎は「大阪で記録を残せなかったのは悔しい。でも先頭集団で、今までの日本人にないレースができていい経験になりました。誘導ミスは…、もういいです」と話した。スタート時の気温27・5度、湿度70%という条件下、3時間48分をかけて歩き抜いた過酷レース。その最後に待っていたのは、途中棄権扱いという、やるせない結末。それでも月間1000キロを歩く驚異のスタミナから「怪物」の異名をとる山崎は潔く「この悔しさは北京で晴らします」と必死に前を向いた。【佐藤智徳】
[2007年9月2日9時43分 紙面から]
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