<箱根を読み解く7つのカギ:(3)雑草軍団>

 今季、上武大の快進撃が目覚ましい。6月の全日本駅伝の予選会で6位に入り、初めての全日本切符をつかむと、10月の箱根予選会では唯一10選手全員が61分台でゴールしてのトップ通過。勢いは止まらず、11月の全日本は6位に入り、来年のシード権まで獲得した。箱根は4年連続4度目の出場だが、台風の目となりそうな気配だ。

 群馬県伊勢崎市に拠点を置く新興勢力。早大で箱根優勝の経験を持ち、五輪に2度出場した花田勝彦監督(40)が04年に就任すると、地道に、ゆっくりと力を伸ばしてきた。高校時代に活躍した有力選手はおらず、まさに雑草軍団。だが山の多い立地環境を生かし、眠っていた才能を開花させるのが花田流だ。上毛三山(じょうもうさんざん)と称される赤城山、榛名山、妙義山へ出かけては、集団で走り込む。標高1500メートルほどの準高地。体により負荷がかかる状況で、粘れる足づくりがなされる。

 そして自主性をうながす指導術。花田監督は「高校時代(滋賀・彦根東)に指導者がおらず、長距離ブロック長として自分が練習メニューを立てた。そこに下地がある」と言う。監督が選手を走らせるのではなく、監督とは方向性を示し、個々の自覚をうながすもの。選手が自ら考え、明確な目標を持って練習に励む。

 4年目となる今回でシード権(10位以内)をつかみ、ゆくゆくは上位争いも期待されるところ。だが、花田監督の目標はまったく別のところにあった。「箱根の優勝は考えていません。個人で五輪に出てほしい」ときっぱり。佐藤、倉田の1年生コンビは高校時代に「世界を目指そう」と勧誘された。佐藤は「箱根は芸能人を見るような感覚だった」と言うが、5000メートルの記録は高校時代から44秒も短縮。チームのエース格として大舞台に臨む。

 箱根をステップに、世界へ羽ばたかせたい-。そんな理想に駆られる花田監督には1つの構想がある。「大学で指導を終わりにしたくない。(卒業して)2、3年後も上武の組織として見られる環境を、この群馬でつくりたい」。北関東から新時代を担うリーダーは、大きな野心とともに闘っている。【佐藤隆志】

 ◆1970年代生まれの監督

 早大の渡辺康幸監督(38)、東洋大の酒井俊幸監督(35)ら有力校をはじめ、上武大・花田監督と早大で同期だった櫛部静二監督(40)は城西大を率いる。前回初シードをつかんだ国学院大の前田康広監督、また国士舘大を指揮する小川博之コーチは、ともに78年生まれの33歳。若き指導者たちの手腕にも注目だ。