<箱根を読み解く7つのカギ:(6)ロンドンへの道>

 今回の箱根をステップに、来夏のロンドン五輪を目指す男がいる。明大の鎧坂(よろいざか)哲哉(4年)は今年7月、英バーミンガムで行われたUKトライアル1万メートルで27分44秒30の日本学生最高記録を樹立し、五輪参加A標準記録を突破。11月の国際千葉駅伝は学生選抜ではなく日本代表に抜てき。この1年で大きく飛躍した。

 鎧坂

 海外へ記録を狙いに行って、出たのは自信になった。本当はロンドンに行くつもりだったけど、電車が止まっちゃって。でも来年行くからいいやって。

 広島・世羅高時代は、同じ五輪を狙うケニア人留学生カロキ(エスビー食品)と切磋琢磨(せっさたくま)した。「これが世界レベルなんだ」と体感して以来、視線は海外に向いた。大学4年間を経て「世界と戦おうという意識がより強くなった」と言う。西監督も「一戦ごとに大きくなっている」と目尻を下げる。持ち前のスピードに粘りも兼ね備え、日本のエースとなりそうな勢いだ。箱根では花の2区に強いこだわりを持ち、「2区は渡辺(康幸)さん、竹沢(健介)さんなど世界を目指して走った選手ばかり」。悩まされた腰痛もあって29日に発表された区間エントリーは「補欠」。ただ、本番では入れ替わりそうだ。

 明大の鎧坂に負けじと五輪出場を視野に入れるのが東海大・村沢明伸(3年)だ。前回2区では歴代2位、日本人最多となる17人抜きを披露した。6月の日本選手権1万メートルでは実業団選手に交じって2位、7月のアジア選手権は銅メダル。ただし夏に胃腸炎で海外遠征に出られず、10月出雲、11月全日本駅伝ともに日本屈指のスピードは見られなかった。

 それでも長野・佐久長聖高時代からの恩師、両角監督の信頼は揺るぎない。「村沢は練習からほかを圧倒する。どこに配置しても精いっぱいの仕事をしてくれるはず」。今回は山登りの5区起用が有力視されたが、ふたをあけてみれば従来通り2区エントリー。村沢は「箱根は経験値が大きい。2区は走っているので頑張るポイントが分かる」。昨年に引き続き快走を誓う。学生ランナーが五輪に出場すれば08年北京大会5000メートルの竹沢健介(早大)以来。村沢は「来年の春に標準記録を狙う準備はしている。ロンドンへの青写真は持っています」と言う。

 誰もが大きな野心を抱く2012年。まずは新春の箱根から、ロンドンに向けて力強く走りだす学生ランナーたちに注目だ。【佐藤隆志】